東京日記。

 

上京してもうすぐ1年たつ。

東京に引っ越した日は、一粒万倍日と天赦日と寅の日が重なる、2021年で最強の開運日だったらしい。

都民になった夜、中野サンプラザに志磨万博を観に行った。

主役の人はトラ柄のセットアップで出てきた。

 

madorigirl.hatenablog.com

 

 

幸先のいいスタートのように思えたが、想像通りコロナ禍の東京でのひとり暮らしはさみしくて、過酷なものだった。

 

上京してからも2度、緊急事態宣言が発令された。

在宅勤務か、職場と部屋をただ往復するだけの日々。

史上初の1年延期された東京オリンピックが徒歩圏内でやっていても、まったく興味がわかず、東京に暮らしている感覚なんて、まるでなかった。

テレビのないせまい部屋でずっとひとりで過ごして、昔はわざわざ大阪から来ていたライブハウスや美術館、観に行きたい建築はすぐそこなのに、何もやっていないし入れない。近くにいるのに遠い。

秋ぐらいまでは、なんで自分は東京にいるのだろう、と毎日思っていた。

 

東京にいる実感がようやくわいたのは年末のことだった。渋谷 PARCO劇場での音楽劇「海王星」に何度も通った。このために東京に来たんだと思った。

 

 

ずっと東京にあこがれはあったけど、まさか自分が東京で暮らすことになるとは思いもしなかった。

コロナ禍になって生活のすべてが変わった。

コロナがなければ上京することはなかったと思う。

 

なにもできなかった1年だったけど、ふりかえると色んなことがあった。

2回も深夜に大きな地震があってこわかった。

「料理は化学」と思えてきた。

休みの日にちゃんと午前中に起きて、東京の喫茶店に行くことが最近のマイブームだ。

近所の桜も咲いてきた。

 

そろそろ東京での暮らしのあれこれを書きたくなったので、今日から東京日記をはじめます。

 

報告が1年も遅れてしまったけれど、

わたしは東京で元気にやってます。

 

 

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玄関ドアに貼ったホテル味園のキーホルダー(東京のわたしの部屋のなかは大阪)。

 

 

 

音楽劇『海王星』好きなシーン羅列(歌唱シーン以外)

海王星の好きなシーン羅列

※たぶんネタバレはないと思います。

※好きなところが増えるたびに追記しています。


一幕

・幕が上がった瞬間から音楽がはじまるまでの間のステージのようす(静止画)

・神さまが帽子が置いてから音楽がはじまるまでの間

・女学生ちゃんたちのアイシャドウ。ドレスコーズ含め、男性キャストのみなさんは白塗り&黒アイシャドウのモノトーンメイクの方が多いのに対し、女学生ちゃんたちはカラーメイクなのがかわいい。

・女学生ちゃんたちの髪飾り

・そばかすちゃんの校則違反な丈のスカートと、オレンジのチーク。オレンジのチークいいな、マネしたい

・アンナさん(8回結婚した女)のルージュのひきかた。メイクも衣装もなんとなくナイトメア・ビフォア・クリスマスのサリーみたいで好き

・アンナさんのメイクには意味があった!8本の涙!(←1月25日追記)

千穐楽にやっと気づいた喫煙シーン(煙は水蒸気)

・スーツにガウンを羽織る教授

・恋に落ちる瞬間を例えるそばかすちゃんの台詞

・魔子さんの椅子の運びかた

・椅子についての台詞

・椅子がまあまあ重要な役割

・じつは神さまがいちばんいい椅子に座っている。神さまだから?

・熊沢太郎さんたちの赤いネクタイ、赤いチーフ、赤い靴下、赤いルージュ。

・ボーイさんと椅子の件で交渉成立してヒャッハー!なそばかすちゃん

・ボーイさん(山岸門人さん)の声カッコいい。話し声めっちゃ好き。いちばんカッコいいと思う。替え歌は2曲数フレーズ歌ってらっしゃるけど、ボーイさんソロの持ち歌ほしい

・猛夫さんと魔子さんのシーンは、公演数が増すごとにふたりの関係はどんどん親密になっていく

・先生なんで今女学生ちゃんたちに海のマカロニの話?

・先生のおだんご

・彌平さんのワープっぽい降臨の瞬間

・椅子と共に去ったゆく酔いどれ客たち

・舞台のはじっこでゾンビみたいにぐったりしている酔いどれ客たち

・順番にこっそりゆっくり幽霊のように去ってゆく酔いどれ客たち

・彌平さんの「うそ〜ん……!」(大千穐楽ファイナル名古屋は「うそだがや」とも言ってた)

・彌平と猛夫の再会シーンのアドリブ(毎回ちがう)

・コーヒーについて語る彌平さん

・彌平さんと神さまのツーショットで幕が閉じる一幕のラスト

 

 


二幕

・下男さんがお婆さんと一緒に十字を切るところ

・彌平さん椅子とばすのうまい

・500円分の予言の彌平さん(毎回違うバージョン)と、500円がちゃりーんと落ちる瞬間の神さまのしぐさ

・女学生ちゃんたちの台詞ハモりがち

・彌平さんの予言こっそり見てる先生

・係長さんの所作

・鳥類言語学をわたしも学びたいぞ

・下男さんがアンナさんをリフトしてくるくるするところ(あ、これ歌唱シーンや)

・那美さんの瞬間移動

・アンナさんがベロベロに酔ってるのにお婆さんに椅子を譲るところ

・運命否定派の魔子さんのラスト間近のシーンの台詞グッサリくる。これが60年近く前に書かれた台詞なのか…

・神さまの表情(無表情編)

・神さまの表情(ふてぶてしい編)

・神さまを見ているお婆さん

・ラストシーンを見届ける神さまと時計の音

・ラストシーンのあとの緊張感

・最初と最後がいちばん寺山っぽい気がする

 

・毎回ほぼいちばん後ろの席しか取れなかったけど、大きな市民会館での地方公演で、長い長いスポットライトの先のキャストと、劇場全体を観るのが好きだった。

 

 

 

カーテンコール

・ラストシーンがまだほんのり抜けきれていないキャストのみなさんの表情

・ユースケさんが中尾ミエさんをエスコートするところ

・キャストのみなさんが振り向いて、ドレスコーズのメンバーと手振り合うところ、神さまの笑顔

・この手の振り合いのときに、カンパニーのみなさんがどんどん仲良くなっていっているのがわかった

ドレスコーズの白塗りはカーテンコールのときしかわからん

・神さまがおじぎをしているときだけ見える帽子のあと

・神さまめっちゃ髪の毛くるくる

・圭作さんのドレスコーズの帽子の超難問、3級は取れたけど、ぜんぜんわからん。弘前終わってこれとこれが逆やったかな?と思ったりもしたけど、間違えて級を落とすのイヤやからまだ回答してない

・カーテンコールでのユースケさんの冗談。千穐楽は両サイド(山田くん・中尾ミエさん)からツッコミ入ってた

・観てない公演のユースケさんのカーテンコールの冗談と、本番中のアドリブも知りたい

 

・初日から思ってたけど、山田くんめっちゃ顔ちっちゃい(←海王星関係ない)

・演出家の眞鍋さんを何度か客席でお見かけしたけど、眞鍋さんパンフレットのお写真より実物のほうがカッコいい(←海王星関係ない)

 

・山田くんが最後に下手でひとり客席に深々とおじぎをしてから舞台をあとにするところ

 

 

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海王星スペシャルカクテル『シールオブラブ』

美味しかった

音楽劇『海王星』と、毛皮のマリーズの解散から10年。

 

はじめに

音楽劇『海王星』のプレイリストを毛皮のマリーズドレスコーズの楽曲でつくりました。

このプレイリストは、劇中での19曲の曲目どおりに毛皮のマリーズ、またはドレスコーズの楽曲をあてていますが、この曲が似ている、近い、という類似曲リストを目的としたものではありません。

劇中では、たしかにドレスコーズ毛皮のマリーズの作品が浮かぶ楽曲もありますが、音楽監督志磨遼平(ドレスコーズ)の「今のぼくが持ちうる全てのアイデアを今作に捧げます。」という開幕前の意気込み通り、いや、それ以上にこの音楽劇の19曲のどれもが、これまでの志磨遼平のキャリアのどの作品よりも進化したものとなっています。

音楽監督志磨遼平(ドレスコーズ)は、控えめに言って天才だと思います。

 

毛皮のドレスで海王星

‎235の「毛皮のドレスで海王星」をApple Musicで

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以下、ライナーノーツです。

志磨遼平(ドレスコーズ)は音楽監督兼生演奏兼神さま役です。

 


M1 _ ラプソディ・イン・ザ・ムード

序曲【ブルース】

vocal:ブルースを唄う老婆(中尾ミエ

海王星』と同じく、波の音からはじまる哀しいブルース。

ケンさん(福島健一)のフルートが最強。

曲の後半の幕が上がる瞬間が好き。

 

 

M2_ AC ボーイ/ DC ガール

酔いどれ船

vocal:酔いどれ客たち

初日はファン目線だと完全にドレスコーズのライブとして観てしまったオープニング。踊り狂う酔いどれ客たちがダンサーに見えてしまった。(ごめん。)だってめっちゃいいところにドレスコーズのステージがあるんだ。ギターリスト志磨遼平。そして、しまのギターソロ。

思わず客席を立ち上がりそうになるのをガマン。

酔いどれ客たちのはっちゃけたダンスがキレッキレで、華やかで、何回観ても見るところがいっぱいで目が忙しい。

パンフレットに掲載された寺山修司の歌詞は、毛皮のマリーズの歌詞だと言われても違和感がない。それはしまが書く歌詞がちゃんと「詩」だからだと思う。

 

 

M3_ 大疫病の年に

たし算の唄

vocal:女学生ちゃんたち

女学生ちゃんたちが唄うワルツ。

かわいい合唱なんだけど、なんか毒がある。

あと、増えたよねってところとか。

どっちもちょっとこわい童謡。

 


M4_ クレイドル・ソング

子守唄

vocal:葉山魔子(松雪泰子

こわい子守唄。子守唄にしてはハードな内容。

この子守唄でよく育ったな、猛夫。

子守唄って暗いマイナーな曲が多いね。

 


M5_ センチメントがお好き?

恋する女

vocal:葉山魔子(松雪泰子

レコードの針を落とすとはじまる魔子さんの歌。ドレスの裾をひらひらさせながら歌う魔子さん。

猛夫が21歳で、彌平さんは47歳。

でも魔子さんの歳は劇中では明らかにされていない。

何歳なんだろう。何歳にも見える。

綺麗な大人の女性に見えるシーンもあるし、恋に恋する少女のような表情のときもある。

そんな何歳の魔子さんの恋にもぴったりな曲。

 


M6_ towaie

紙の月

vocal:灰上猛夫(山田裕貴)・葉山魔子(松雪泰子

ギロからのカ~~~~~~~ッ!!って鳴らすときの神さまがよい。

あのカ~~~~~~~ッ!!っていう打楽器、「ヴィヴラスラップ」っていうらしいよ、調べた。急にトリビア

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%25E3%2583%25B4%25E3%2582%25A3%25E3%2583%2596%25E3%2583%25A9%25E3%2582%25B9%25E3%2583%25A9%25E3%2583%2583%25E3%2583%2597

一幕でボーイさんアカペラの替え歌あり。(めっちゃ声カッコいい)

 

 

M7_ おっさん On The Coner

商売に強くなる法

vocal:熊沢太郎1・2・3

毎演進化するのがこの曲。いちばん拍手喝采の曲。そりゃそうだ、すばらしい。

セールスマンたちかわいいしおもしろい。みんなお仕事がんばってるよね。

熊沢太郎さんたちのダンスで傘閉じたままうねうねする振り付けは雨の日会社でマネしてる。

神さまはバンジョー弾き。

 

 

M8_ みずいろ

恋の歌

一幕vocal:灰上猛夫(山田裕貴

二幕vocal:葉山魔子(松雪泰子

毛皮のマリーズにはなかった恋の設定。でも純愛ってところでは、よく似ている。

ケンさんのサックスがエロいです。


M9_ すてきなモリー

そばかす

vocal:そばかすちゃん(清水くるみ)

「小鳥と海賊とあたし」という歌いだしを聴いて、“小鳥と私” を選びそうなったけど、モリー

そばかすちゃん猫ちゃんみたいでかわいい。

歌声も台詞を話す声も、とってもとってもかわいらしい。しかしかなりの悪女。だいぶ悪い。でも寺山さんが描く性格悪いコが好きなんだよな。

 


M10_ エリ・エリ・レマ・サバクタニ

恋は一枚の夜の羽根

前半vocal:灰上猛夫(山田裕貴)・葉山魔子(松雪泰子

後半vocal:酔いどれ客たち

神さまの舵で歌って踊る酔いどれ客たち。

『ジャズ』ってめっちゃ神さま出てくるよね。

いや、『ジャズ』以外でもでてくるね。『1』とか特に。まさかしまが神さまを演じる日が来るとは…… 。

猛夫さんと魔子さんが手を繋いで階段を駆け上がって、神さまの前に行くところが好き。

神さまの前で愛し合う猛夫さんと魔子さん。

そしてこの曲もケンさんのフルートがよい。

猛夫さんと魔子さんのデュエットのところはフルート吹いてて、酔いどれ客の合唱になるところでサックスに持ちかえるんだよ。

 

 

M11_ 悲しい男

わが人生の時

vocal:灰上彌平(ユースケ・サンタマリア

コーヒーが出てくる歌が好きだ。

彌平が神さまの前を通りながら歌うので、一瞬フロントマン:ユースケ・サンタマリア、ギター:志磨遼平の一瞬バンドみたいな構図になるところが好き。

クリスマスはケンさんがジングルベル弾いてくれたよ。

神さまはアコギ(東京くん・Gibson J-45)。

 


M12_ さよならベイビー・ブルー

ブルースII

vocal:ブルースを唄う老婆(中尾ミエ

毛皮ちゃんの浅川マキっぽい歌がどれも海の歌なのは、偶然ですか? それとも運命なのですか? お婆さん。

お客さんに語りかけるように歌う中尾ミエさん。

明るい歌を歌うイメージの歌手、中尾ミエさんにこんな暗い新曲2曲も歌わせたのは、音楽監督志磨遼平(ドレスコーズ)がはじめてではなかろうか。

 

M13_ 愛する or die

あたしのハレルヤ

vocal:来宮那美(伊原六花

無神論者那美さんの歌。

伊原さんが毛皮の愛するor die を歌う妄想。

伊原さんの演技、劇場でもすごく引き込まれるけど、先日の配信で観たアップの演技も凄かった。ネタバレになるからあまり書かないけど、あんな表情をされているなんて、知らなかったよ。すごい女優さん。『海王星』配信でも観られて本当によかった。

 

 

M14_ 贅沢とユーモア

結婚式はいいもんだ

vocal:酔いどれ客たち

人生には贅沢とユーモアが必要。

8回結婚して離婚しても、それがみんなを笑わせるユーモアになったらカッコいいよね。

アンナさんの目の下のメイクは、オーケンではなく、8本の涙らしい。

そりゃそうですよね。寺山さんが『海王星』を書いてたときはまだオーケン生まれてないですね。

 

 


M15_ 犬ロック

教授の唄

vocal:教授(大谷亮介)

教授(大谷亮介さん)がスタンドマイクで歌うナンバー。教授ロック。犬ロック。教授がおっしゃるには、好きな人と結婚した場合は、ラブドになると思う。

‎毛皮のマリーズの"LOVEDOGS"をApple Musicで

この曲もフロントマン:大谷亮介、ギター:志磨遼平の構図の瞬間を見逃してはいけない。

 


M16_ 非・生産的人間

悪口唄

vocal:女学生ちゃんたち

女学生ちゃんたちカッコいいかわいい。

しまって女の子とかアイドルちゃんたちが歌うこういう曲、めっちゃ得意分野な気がする。

今の10代の女の子たちの毛皮のマリーズのコピバン出てこないかな。見たいな。

歌詞カードに載せられないほどの悪口。『海王星』のパンフレットにも載ってないです。

 


M17_ 20世紀(さよならフリーダム)

海詩瑪

vocal:酔いどれ客たち

劇を観ていないときも、ふとこの合唱を思い出しては泣いてしまう終わりのはじまり、いや、終わりははじまりの歌。さよなら、フリーダム。

千穐楽では涙腺崩壊で、じぶんも酔いどれ船に乗ってる気分になった。そして年末感。

千穐楽の名古屋は、本当にこの歌詞のとおり。みんな明日からどこに行くんだろう。この日のための、この海王星カンパニーのための特別な歌だと思う。

海詩瑪(かいしば)と読むらしい。どういう意味のことばなんだろう。

 

 

 

M18_ カーゴカルト

毒薬の歌

vocal:来宮那美(伊原六花

伊原さんの歌も声もダンスも、素晴らしすぎる。ダンスでピタッとキメた一瞬のポーズも美しくて毎演見惚れてしまう。

那美さんひとりテンポの速い曲で歌ってて、酔いどれ客たちは時が止まっている対比の演出がカッコいい。

神さまのガットギターが好き。カーゴカルトのしまのガットギターも好き。

 


M19_ JUBILEE

乾杯の歌

vocal:灰上猛夫(山田裕貴)・葉山魔子(松雪泰子)・酔いどれ客たち

乾杯と祈りって似てるね。

祈りってことは、神さまに捧げる歌?

ひさしぶりに聴いたら毛皮のマリーズのラストツアーを思い出して泣いたよ。

毛皮のマリーズは10年前の2011年12月31日に解散。

音楽劇『海王星』東京PARCO劇場千穐楽は2021年12月30日。

魔子さんは運命論を否定されていたけど、私はこれを運命としか思えません。

きっと神さまの舵。神さまのしわざ。

 

 

おわりに

「音楽で人は殺せるか」

寺山修司のこの問いの答えがこの音楽劇にはある。

(評)「音楽で人を殺せるか」 その問いに答えてくれる音楽劇:朝日新聞デジタル

 

この音楽劇で、観客の感情を動かしているのは、台詞ではなく、寺山修司作詞・志磨遼平作曲の音楽だ。

音楽劇『海王星』は、音楽がないと成立しない劇だということが、一度観ただけでよくわかる。

この戯曲が今年まで上演されなかったのは、この戯曲に曲をつけることができる音楽家が存在しなかったからではないだろうか。寺山さんは、いつか上演されることを願ってこの戯曲を遺したのだと思う。

毛皮のマリーズの解散から10年の年に、寺山修司と志磨遼平との時空を越えての共作・音楽劇『海王星』が上演されることは、MARIES MANIA にとってはやはり、運命としか思えない。

音楽劇『海王星』は、この10年のキャリアを積んだ志磨遼平が存在しなければ実現しなかった音楽劇なのだ。

 


 

コーヒーと私。

 

コーヒーが好きだ。

でも、むかしからコーヒーが飲めたわけではない。

子供の頃から喫茶店は好きだったが、クリームソーダティーソーダ、ミックスジュースが飲めたり、あのふわっふわのぶ厚いバタートーストが食べられるシブい洒落た空間だから好きで、コーヒーが好きというわけではなかった。

高校時代は予備校帰りに、HEP FIVE のスターバックスによく寄り道していた。そこでもオーダーするのはいつも、キャラメルフラペチーノのキャラメルソースとホイップを限界まで多めに入れてもらって(最初から入っているものの量を増やすのは無料)、もはやコーヒーの風味などうっすらとしか感じない飲み物だった。

 

コーヒーが飲めるようになったのは、社会に出てからだった。

新卒で入社した住宅会社で設計を任されるようになった頃、当時担当していたプロジェクトの建設地は結構な高級住宅街で、お客さんとの打ち合わせはいつもその建設地の近くの不動産会社で行われていた。

土日は午前、昼、夕方、夜と1日に4件打ち合わせがあって、お客さんに設計プランのプレゼンをして、仕様を説明して、ずーーーっと喋りっぱなしで喉がカラカラになった。

打ち合わせのときに不動産会社の方が出してくれていた飲み物が、毎回豆から挽いて淹れたこだわりのホットコーヒーだったのだ。プロジェクトが始まった頃はコーヒーが飲めなかったが、こだわりのコーヒーを断ることもできず、打ち合わせ中にコーヒーにミルクや砂糖を入れる暇もなく、渇いた喉を潤すためにはブラックコーヒーを飲むしかなかった。

たぶん、それがお客さんにも評判なとても美味しいコーヒーだったから、打ち合わせを重ねるにつれて、ブラックコーヒーを美味しいと思うようになり、今ではコーヒーがないと仕事ができない脳ミソになってしまったのだと思う。

 

そういえば、コーヒーが飲めない頃に一度だけコーヒーを美味しいと思ったことがあった。

卒業制作の提出直前、大学のスタジオで徹夜で作業していた日の朝方に、同じゼミの友達が、研究室で淹れたコーヒーを持って来てくれた。

あのとき、コーヒーは飲めなかったはずなのに、Kちゃんが淹れてくれた紙コップに入ったあったかいインスタントコーヒーの味が今でも忘れられない。

 

コーヒーが飲めなかったくせに、今では苦味が強い深煎りのコーヒーを好んで飲んでいる。カフェラテやカフェ・オーレは別として、ブラックしか飲めない。あと、酸味の強いコーヒーは苦手だ。

 

特に好きなコーヒーは、

大阪中崎町・書肆アラビクの「ブレンド・ネロ」。

西宮北口・ひばり珈琲に行くと「KENブレンド(深煎り)」か「勝新ビターブレンド(もっと深煎り)」で迷う。(KENとはもちろん高倉健。)

東京の神保町で古本を見たあとは必ず神田伯剌西爾(ぶらじる)で「仏蘭西ぶれんど」を飲んで、お土産にそのコーヒー豆も買って帰る。東京でいちばん好きなコーヒーだと思う。

そして、今とても博多・喫茶ひいらぎの「珈琲」の味が恋しい。前回、コロナ前にドレスコーズのライブ前に訪れたときは仮店舗だったけど、予定通りだともう元の場所に戻っているはずだ。

正しい街とジャズとコーヒー。 - ドレス・喫茶・建築

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去年、今年と喫茶店に行くことが激減してしまっていたけど、そろそろまた、全国の美味しいコーヒーを味わう旅に出たい。

ドレスコーズ『バイエル』は、コロナ禍における孤高のプロテストアルバムだ。

 

東京では明日、4度目の緊急事態宣言が発出される。

なのに、東京オリンピックパラリンピックは開催されるらしい。

 

この夏のロッキンは、医師会の要請を受け、中止を決定。

なのに、オリパラは開催されるらしい。

 

緊急事態宣言の発出にともない、政府から飲食店での酒類の提供を中止の要請があった。

なのに、オリパラは中止されないらしい。

 

この長すぎる非常事態のピークのタイムラインに流れているのは、賛成か、反対か、政府への批判、主張。

 

 

そして、10年前の東日本大震災後と同じように、

 

「ぼくらは、いつも通りに生活するしかない。」

「自分は自分の仕事をするしかない。」

というような「~しかない。」というツイートがよく目についた。

 

ロッキン中止の発表にともない、ミュージシャンたちも

「残念だけど、前に進むしかない。」とか言っていて、

そりゃそうなんだけど、震災のときも今もなんかこのポジティブなようでネガティブなかんじの「~しかない。」には違和感がある。

 

しまは「~しかない。」を、こんなかんじで使ったことはない。

(「期待しかない。」とか、ポジティブなたまらんMAXなかんじではよく使うと思う。)

 

この「~しかない。」以上。みたいな言い切りでそこで思考が停止するのとか、

オリンピック開催に賛成か反対か、批判か共感かのその2択しかないのとか、0か100かみたいな考え方とか、

なんでそうなってしまうのか考えた。

 

たぶんこれは、日本の義務教育のせいじゃなかろうか。

 

国家のやることに疑問を持たないように、

みんな同じように、みんな平均値で、言うとおりにするように、お手本通りにするように育てる(というか矯正する)そんな教育。

極端に言ったら、『平凡』のノーマリストの世界みたいな。

 

 

自分で考える力は、日本の義務教育では育たない。

 

でもさすがにボロが出すぎてみんなが声をあげたり、

みんなが意思表示をするようになってきた。

 

 

 

*****************

 

 

 

前置きが長くなったけど(←前置きやった!)、

ドレスコーズの『バイエル』がプロテストアルバムだと思うのは、

 

そのような教育がされてきて今にいたるこの世の中で、リスナー自らに考えさせるアルバムだからだ。

 

ドレスコーズの考えさせるシリーズの作品は、『バイエル』にはじまったことではない。

コンセプトアルバム『平凡』をはじめ、人類最後の音楽として発表された『ジャズ』も、一聴するといいメロディで、しかし深堀していくと様々な時代背景や情報が、何層ものレイヤになって地下に続く巨大帝国になっているようなおそろしさがある。

この2作品は、コアなフアンにとっては深堀りしていくことで新たなレイヤを発見するというたのしみを持たせつつ、しまが得意とするメロディの良さは担保することで、そうでないフアンも(例えば顔ファンとかも)おいてけぼりにしないいう点でも素晴らしいのだ。

 

 

 

そんな地下に潜む巨大帝国のような作品『平凡』『ジャズ』に対して、

『バイエル』は、世界が終わったあとの焼け野原にポツンと置かれた「スケッチブック」のようなアルバムだ。

 

大人にも子どもにも、「じぶんの好きなように描いていいよ。」と言ってくれるような、そんな作品だと思う。

 

 

今回はじめて公募でメンバーを募集した『バイエル』の全国ツアー “変奏” を観ても、このツアーでの「学びと成長」が受け身の「レッスン」での成果はなく、メンバーが各々の楽器で自らの表現で描いた「ワークショップ」だったのではないかと思う。

 

 

 

もしかすると、しまが依頼したキャリアの長いプロの演奏家たちが集まった今までのどのドレスコーズよりも、この平均年齢が最年少の公募メンバーによるドレスコーズのほうが、楽曲の表現に関するしまの指示は少なく、メンバー自らの表現が生かされていたのではないかとわたしは想像する。

 

誰にでもやさしく、誰も傷つけずに「じぶんで考える」ことを能動的にさせて、しかも「学びと成長」をテーマとしたこの作品は、じぶんで考える力を育てなかったこの国の教育、そして現代社会に対して、反逆的な作品だとわたしは思う。

だって考えないと成長しないと思うし。

 

これまでこの国で大きな出来事が起こるたびにじぶんの好きなロックンローラーの政治的な発言や、メッセージ性のある歌を歌うのを見てきた。

好きな人が歌う主張、賛成か反対かとか、平和を願ったり、政府への批判だったりと、じぶんの考えはいつもまあ、好きな人とだいたい同じなんだけど、わたしは好きな人が歌う主張に同調しかできなくて、それだけ。それで、わたしはどうすればいいかなんて、今まで誰も教えてくれなかったし、歌で世界が変わるところは、今のところみたことがない。

 

 

 

しまは、4年前のドレスマグの特集(「音楽と政治」)で話していた「音楽はこれから、どう社会と関わっていけばいいのか」という問いに対する、現段階でのしまの答えと姿勢を、『バイエル』で示したのではないかと思う。

 

 

 

『バイエル』は、しまがはじめて音楽で意思表示をし、メッセージ性をもたせた作品だと思った。

賛成か反対かではなく、批判でもなく、「学びと成長」というテーマをもった作品を発表し、ツアーでもそれを見せてくれた。

今まで、ミュージシャンたちが歌う主張に同調しかできなかったわたしが、音楽を聴いて、この社会について、この社会でわたしはどうあるべきか、そしてそのためにもっと学びたい、なんて考えたのははじめてだった。

こんなひどい世の中なのに、『バイエル』を聴くと、ちょっと希望が見えてしまった。

 

こういうかたちで、こういった意思を作品で示したミュージシャンはしまがはじめてだと思うし、

めっちゃロックンローラーやな、と思うし

めっちゃパンクスやん、とも思うし、

控えめに言ってめちゃくちゃカッコいいです。

 

以上のことから、ドレスコーズの『バイエル』は、孤高のプロテストアルバムだと思うのです。

 

 

 

 

 

 

 

コロナ禍が終わったあとに待っている、ニューノーマルの世界は、どんな世界なんだろう。

 

新しいぼくたちのベーシック

結局かわらない世界

 

『バイエル』“変奏” ツアーで “おわりに” を聴いたとき、

「PLAY TOUR」ツアーファイナルの終演後に会場で流れたときとの想いとはぜんぜんちがうものだった。

 

東日本大震災が発生した日の夜に、ツアーでその日だけ演奏された“人生Ⅱ”が、

そして4月、東日本大震災の後、すっかり違う街に変わってしまった東京・渋谷公会堂で演奏された“弦楽四重奏第9番ホ長調「東京」”が、

10年後、コロナ禍のこのツアーでどのような意味をもって“変奏”されたのか。

宿題を解くように考えている。

 

この世界でこれからわたしはなにから学ぼうかな。

そういった意味では『バイエル』は、わたしの手元に届いたばかりで、まだまだ未完成の作品だと思う。

 

 

 

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プリントして部屋に飾ってるくらいお気に入りの今作のアー写

 

 

 

中野サンプラザにおける志磨遼平万博2020のレポート。或いは志磨遼平10周年への祝辞。

 

2020年度最終日の3月31日。

中野サンプラザにおける『志磨遼平万博 “IDIOT” TOUR 2020 ーTOKYO IDIOT』(以下:しま博)に行ってまいりました。 

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|| 1年越しのメモリアル・ツアー『IDIOT』。

2020年は、志磨遼平メジャーデビュー10周年のメモリアル・イヤーだった。
その特別な年と「IDIOT」を、2020年度最終日のしま博でわたしはようやくお祝いすることができた(ギリ)。おめでとうしま。

思えば、配信じゃないライブを観るのは2019年の『12月24日のドレスコーズ』以来、1年4ヶ月ぶりのこと。

ひさしぶりのライブと遠出。ヒョウかトラかで散々迷ったあげく、お気に入りのヒョウ柄のジャケットを着て、いつもより薄めのメイクとマスクで家を出た。

東京・中野駅前の桜は、はやくもはらはらと花びらを降らせていた。

それは、雨男の10周年を雨ではなく花びらでお祝いしているようで、(中野の桜、なかなか粋ね)なんて思いながら、開演予定時刻の中野サンプラザ大ホールにすべりこむ。

 

2017年にここでキヨシローのライブのしまを観たときは、2階席最後列壁の前だったのに、今日はステージぜんぶとメンバーの表情も機材も見えそうな前から数列目の予想外のよき席。

でも今日はこんなにおおきなホールにキャパの50%しか入れなくて、お客はマスクして声も出しちゃいけなくて、どんなライブになるん……と3秒くらい不安になったのち、

客電が落ちると、西クン(越川和磨)とうっしー(牛尾健太)のギターによる “バンドワゴン” のイントロで、会場客席は総立ち!3秒の心配のあと5秒で思わず立ち上がってしまう。

 

 

|| 10周年のファッションと毛皮のマリーズ。 

ステージに飛び出してきたキング(しま本人)は、なんと!トラ柄セットアップ!!

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トラ柄セットアップで登場のキング。(ナタリーより転載)

その瞬間(負けた!!!!!)と思うヒョウ柄の関西人。もっとハデでぎっらぎらにめかしこまなかったことをしま博開幕10秒でひどく悔やむ。

トラ柄セットアップでほぼトラのしまは「タイガー」をやるために今日は “贅沢とユーモア” か “カーゴカルト” が演奏されるのだろうと思った。(演奏されなかった。)

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タイガー。(撮影・手:235)

よく見ると黒のリボンタイに加え、フリンジみたいなのも首からさげていて、ブラウスも素敵☆ 10周年にふさわしい衣装。

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前髪あり。(SPICEより転載)

めちゃくちゃおしゃれ。コロナをいいわけにおしゃれをさぼってしまったことをわたしは深く反省している。

そしてまたひさしぶりに前髪を作っていることに気が付いた。センター分けもカッコよくてよいけど、やっぱり前髪あるほうがかわいいからすき。

 

2曲目は “ボニクラ” 。やはり10年前の毛皮のマリーズのメジャーデビューお披露目ツアー(『Restration TOUR 2010』)を思い出す。めちゃくちゃ思い出す。

でもこれは毛皮のマリーズではないし、あれから10年経っているのに(正確には11年弱)、今演奏しているこのバンドは毛皮のマリーズより毛皮のマリーズだし、西クンもいい意味で変わってないし、デビューツアーよりも、デビューツアーじゃないか!!!(個人の見解です。)

 

 

|| スガ・ウエノ

そんな華麗なオープニングナンバー2曲が終わり、最初のパビリオン(て呼んでいいのかな?失礼じゃないかな?まあいいか。)として登場したのは、まさかのウエノコウジ

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ウエノ(SPICEより転載)

ウエノ足なっげ!!!細っそ!!!カッコよさエグ!!!!なにすんの??と思っていたら、まさかのスガ・ウエノによる“ゴッホ”。(※注)スガウエノ:スガさま(菅大智さま)とウエノコウジによるユニット。武藤ウエノみたいなかんじで読んで。)

スガ・ウエノによる“ゴッホ”冒頭、息ができなくなるほどエグくて死んだ。

これたぶんほとんど即興。そんなかんじ。

ゴッホ”後半は酸欠でおぼえていない。

ちょっと待て。ウエノのベイスで“REBEL SONG”イントロが聴きたいぞ(←妄想でウエノノ無駄使い)と思ったけど、“コミック・ジェネレイション”でウエノコウジ無事毛皮のマリーズに加入。

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 スガウエノ(ナタリーより転載)

 

 

|| 竹中直人さんドレスコーズに加入。

ウエノに続いてのパビリオン「た~けなかなおとさ~ん!!!(竹中直人さん)」(←しまのマネで読んで)が、バラの花束を持って登場。かっこよく花束をしまに手渡す。

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花束贈呈。(ナタリーより転載)

 

しまがアコギ(J-45)を弾いて、竹中さんが歌う『1』のメドレー。

竹中さん、「『1』が好き」ってラジオで言ってた。

竹中さん “Lily” 好きすぎてしまにおねだりしたから、ラジオでアカペラの “Lily” が聴けた。

 

 

“みずいろ” は竹中さんボーカルのフルコーラスで披露。

竹中さんが歌うと他の人が作った曲のようにも聴こえる。この曲を知らない人に「井上陽水さんの曲だよ。」て言っても信じてしまいそう。竹中さんが歌うことでまた違ったこの曲の魅力を感じた。

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“みずいろ”歌唱中の竹中さん。(SPICEより転載)

竹中直人さんがドレスコーズでしま博に出演したという10周年の贅沢。

まだまだパビリオン2人目でこれ。しま博が終わるころにはわたしはどうなってしまうのだろうか……。

竹中さんはスキップで出てきて、スキップで去っていった。

「はやく来てはやく帰りたい♪」て言ってた。

 

 

 

|| ポエムの朗読。

竹中直人さんボーカルのドレスコーズによる“みずいろ”のあと、しまトラだけをステージに残し、一旦幕が下りる。

舞台のはしっこの教壇みたいなところにしまが立ち、ポエム(『THIS HEART OF MINE。』)の朗読がはじまる。

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緞帳の前のタイガー。(SPICEより転載)

しまのポエムをきいているのに、フラッシュバックするのはなぜかわたしの10年の出来事ばかり。しまの10周年なのに。

それもそのはずだ。わたしの10年は、わたしとよく似たほぼじぶんなこの人の10年とともにあるのだ。

ちゃんと聞きたいのに、思い出すばかりでちゃんと聞けなかったポエム。

翌日のドレスコーズマガジンの「本と音」に載せてくれることを期待していたらやっぱり載せてくれて後でじっくり読むことができた。

 

 

|| the dresscodes with B

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2017年のthe dresscodes with Bドレスコーズ公式HPより転載)

最近のコは「with B」と言われても、なんのこっちゃわからんのではなかろうか。

the dresscodes with B の初ライブ(2017年@新木場 STUDIO COAST)の頃すでに、ブルゾンちえみ with B の活動も終焉に向かっていたと、元ブルゾンちえみさんのインタビューで読んだ気がする。

ポエムをちゃんと聞けなかったのにはもうひとつ理由がある。

転換の最中に聴きおぼえのあるギターの音がきこえたからだ。

JIMちゃんのギターからTHE BAWDIES(with B の「B」とは、BAWDIESの「B」。説明はずかしい・・・)の登場を予想して、気が気じゃなくなっていたのだ。

10数年前、わたしを毛皮のマリーズと出会わせてくれたのは、他にもなくこのBAWDIESだ。(くわしくは下記ブログをドウゾ。)

madorigirl.hatenablog.com

 

the dresscodes with B による “REBEL SONG” (ウエノではなくここだった!でもwith Bなら許す)。たっくん(TAXMAN)はやっぱりヒロTパートのコーラスがめちゃくちゃじょうず!  ROY のベイスも悪くない(わたしの「悪くない。」「キライじゃない。」はかなりの肯定やで)。ていうか ROY を純粋な(歌わない)ベーシストとして観たのはthe dresscodes with B の初ライブが初めてで、ROY 本人もその日がベーシストとしてステージに立つのははじめてだと言っていた。ROY はボーカリスト・フロントマンのイメージが強いけど、実はめちゃくちゃベイス上手いんやな……と気付いたんだった。

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わたしは ROY母と同じ名前。(SPICEより転載)

とにかく貴重だし、しま博でthe dresscodes with Bを観ることができたのは、わたしにとってとても贅沢なことだ。

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わっしょーい!!(ナタリーより転載)

今日の日のために、はじめて武道館に立ったときのむかしのスーツを引っぱりだしてきてくれた BAWDIESでしまがいちばん好きな “LEMONADE” のしま和訳の歌詞も、むかしの「本と音」に載ってるよ。 

 

 

|| おとぎドレス。

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2016年のおとぎドレス。ドレスコーズ公式HPより転載)

 

「the dresscodes R.I.P. TOUR」(2016年)をともに旅したおとぎ話。

おとぎのホームは中野っていうイメージだけど、まさか中野サンプラでおとぎドレスが観られると思わなかった。

中野サンプラザのおっきなホールに響きわたる“メロウゴールド”のうっしー(牛尾健太)のギターソロ、めちゃくちゃ気持ちよかった。ほんとに気持ちよかった。気持ちよさで言うとこの日イチやった。うっしーも弾いててめちゃくちゃ気持ちいいやろうなあ……と思うぐらい気持ちよかった。これは会場で生で聴かないと体感できない気持ちよさだと思う。入浴に近い。ギターの音でこんな気分になるのははじめてだった。

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うっしー(牛尾健太)。(SPICEより転載)

おとぎドレスといえば、「R.I.P. TOUR」といえばあの名曲 “平和” なんだけど、とてもたいせつで特別な曲なんだけど、今日はしま博で10周年のお祝い。おとぎドレスの “平和” は10年のたいせつな思い出としてとっておこうと思った。しま博ではやらなかったけど思い出してそう思った。

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トラ柄セットアップ。ほぼトラ。(ナタリーより転載) 

 

 

|| ギャングによる中野支配。

しま博イチの異端というか問題児というかいちばん主催にややこしがられそうなパビリオンが出てきた。

「dresscodes a.k.a. FUNK GANG」(通称:ファンクギャング)だ。

まさか出てくるとは思わんかった。「“meme” TOUR」終わったら消え去って行ったまぼろしのバンドだと思ってたから……。平凡さんも生きとったんか!(しかも髪伸びてるし!!)

でもそういえば「“meme” TOUR」の年の夏フェスにも出とったん忘れてた。平凡さん夏フェス仕様のクールビス仕様のスーツまでこしらえたり、その翌年ぐらいのイベントでもスポーティーな衣装でよみがえって登場してたし……、ファンクギャングはしつこいのを忘れてた。最近出てきてないだけやった。コロナで自粛してただけなんか。元気でよかった。

しま博の平凡さんは『平凡』ジャケのダブルのスーツではなく、クールビズ仕様だった。

山中治雄は赤スーツで平凡さんとは逆で髪の毛切ってた。髪切っても相変わらずチャラくてていうかチャラさ増してて脚長すぎで、赤スーツの山中治雄による赤い照明の中の中野サンプラでのファンクギャングによる“山中治雄Automatic Punk”(←これが曲名)はヤバかった。

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真っ赤なスーツの山中治雄(短髪ver.)。(SPICEより転載)

たっくんが舞台袖からサッポロクラシック片手にファンクギャングのステージに見入ってるのが見えた。(そりゃそうなるわ。)

めちゃくちゃ気持ちいい “山中治雄Automatic Punk” からの “ヒッピーズ”もやってくれて(←この日の気持ちよさでは “メロウゴールド” に次いで2位)、ミラボ(ミラーボール)も有りで、ギャングの中野サンプラの乗っ取り方すごかった。DJポリスより渋谷のスクランブル交差点まわせそうやった。

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平凡さんひさしぶり。髪伸びたね。(クールビズ仕様)。(ナタリーより転載)

 

 

 

|| 解散してもとなりにいる西クン。

再びオープニングのバンドメンバーが揃ったステージで、西クンがまさかのMCをとる。

中野サンプラの地下のスタジオで「Faust.C.D.」を作っていたこと。

そのときバンドの雰囲気は最悪だったこと。

そのときはまさかその上の中野サンプラのホールでライブをするとは思ってもなかったこと。

その日録音した曲は“ジャーニー”だったこと。

西クンは思えばいつも、しまに呼ばれることばかりだったと話してくれた。

「でも今日は俺があいつを呼ぼうと思う。」

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西クン。(SPICEより転載) 

 

 

|| そして誰もいなくなった

アンコールは、しまひとりで出てきた。

アコギ(J-45)で、「10年後の“ビューティフル”」とも言われている“ピーター・アイヴァース”を弾き語るしま。

しまが歌う背後にセッティングされていた総勢約20名のメンバーの楽器と機材が、どんどん撤収されていき、ステージにはホントにしまひとりぼっちになってしまった。

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ステージにぼっちのしま。(ナタリーより転載) 

でも、ひとりだけどひとりには見えない。

人間はみなひとりだと思う。でも、この人には多くの仲間がいる。

 

西クンに呼ばれて、「NO MUSIC, NO LIFE?」のポスターの衣装で登場したしまが、“愛のテーマ” を歌うのを観ながら、こんなにたくさんのバンドマン(と竹中さん)に愛されているしあわせものの音楽家は、世界中どこを探してもいないと思った。

 

孔子が遺したこんな論語を思い出した。

 

徳は孤ならず
必ず隣あり

 

 「徳のある人は孤立することがなく、必ずよき理解者が現れる。」という意味だ。

 

ドレスコーズは、バンドである。
ドレスコーズは、みなひとりである。

しまは、この日じぶんのことを「バンドマン・志磨遼平でした。」と名乗った。

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|| 配信で観た「12月20日ドレスコーズ≪EBISU REGRET≫」との比較。

この10年、150もの音楽家がしまに関わったという。(しまのポエムより)

その150もの音楽家のなかから、しま博に出てもらう20の音楽家や演奏する楽曲を選ぶというのは、なんという贅沢で大変なことなのか!(だって10周年だもん。)
いつぐらいからしまは、しま万博の構成(ていうか、ボウちゃんに来てもらうかとか、誰に来てもらうかとか)を考えていたのだろうか。

しま博の帰り道で、ケンゴマツモトが出演していなかったことに気が付いた。と同時に配信で観た「12月20日ドレスコーズ≪EBISU REGRET≫」を思い出した。

そうか、あの≪EBISU REGRET≫としま博で『IDIOT』か。 

natalie.mu

 

 

配信ライブについて、わたしはすごく可能性を感じているし、期待もしている。

だって配信があれば、ワールドツアー全通も夢じゃないし、

フジロックライジングもすぐ行けるし暑くないし寒くないしトイレきたなくないし、

BAWDIESの紅布の配信無観客ライブを観たときは、ちっちゃいハコでやる超激レアチケットのライブも、これからは配信なら観られるんじゃないかと思ったし、

いろんな事情で今はライブハウスに来られない人たちも配信ならライブの時間さえ確保できれば、移動もなくライブを観ることができるし、

ミュージシャン側も配信でたくさんの人がチケット買ったらウハウハじゃないの?もっとやればいいのに配信と思っていた。

しかし、そんなニューノーマルな時代への期待を抱きながら「12月20日ドレスコーズ≪EBISU REGRET≫」を配信で観たとき、(しまった!!!行けばよかった!!!)と激しく後悔した。

前半の「QUIET」はまだガマンできた。

しかし後半の「RIOT」のライブは、このセットはああああ……!このメンバーはああああ……!生で観たかったああああ!!ここに居たかったああああ!!!

PCモニターに何度も映る、ステージサイドからねらった脚の長すぎるベルボトムで革ジャンのきれいなおにいさん(しま)の映像じゃなくて、きたなくてラウドな轟音を生で体感したかった!!!(クリスマスに恵比寿でラウドて……。)

それで3月31日は、どうにかして中野サンプラザに行こうと思ったのです。

12月は行ける状況じゃなかったので、配信があって本当にありがたかった。

でも、実際にその場に行かないと体感できないものがあるのは事実で、この先ライブのたのしみかたが多用化したとしても、じぶんが本当に行ったライブは特別な経験になるんだと思う。だからいっぱいライブやってね、ミュージシャンの人たち。

 

 

|| 志磨遼平の10年。

ここ数年、10周年をむかえたしまと同世代のミュージシャンは多い。

近いところの THE BAWDIES やおとぎ話はずっとバンドとライブを続けている。

音楽だけでなく、ドラマや映画でも主演するほど俳優としても活躍したり、音楽をきっかけにテレビによく出る人気者になった人もいるし、小説を書いて作品が賞の候補になった人もいる。

みんな活動はそれぞれだし、みんなすごいなあと思う。

でもわたしがいちばんすごいと思うのは、みたことのない活動をみせてくれるこの人だ。志磨遼平がみせてくれた10年は、この目ではもちろん見たことがないし、歴史上の人物でもこんな人は知らない。

わたしは志磨遼平が積み重ねてきた10年を誇りに思う。

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シャーツ、ドット柄やったんか!(ナタリーより転載) 

 

|| 突然発表されたニューアルバム。 

しま万博の1週間後の4月7日0時に突然ニューアルバム『バイエル』が配信リリースされた。

natalie.mu

  

また新しい、誰もやっていないことをやろうとしている。

でもわたしには、しまがやろうとしていることがとてもよくわかる。

まだ今は完成品ではないこのアルバムの成長を、つぎの百年、まずはたのしみにしている。

 

 

 

 

*しま博の写真はこちらの2記事から転載しました*

natalie.mu

spice.eplus.jp

うるう年のおわりに。

 

今年もまたひとつ歳をとった。

世界がどんな状況でも毎年誕生日は来るし、年は暮れてゆくのだ。

 

 

2020年は、うるう年だった。

季節と、太陽/月の運行のずれを補正する帳尻合わせの年なんだから、いっそのこと今年はなかったことにしたらいいのに。

今年の誕生日はなかったことにして、全人類来年も同じ歳をもう一年やり直せたらいいのに。

 

あさってもう一度、2020年のお正月が来たらいいのに。

 

 

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茶店でずっと時間をつぶしていたような、そんな一年だった。

 

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待ち合わせの時間を、

たのしみにしているライブを、

あの舞台が開幕するのを、

誰かとの約束を、

ずっと待っていたようなそんな一年。

 

でもそれは、私にとってはさほど悪い年ではなかったように思う。

 

だって、好きな空間(喫茶店)にひとりでずっとこもっていられたのだから。

 

 

満員電車で通勤しなくてよくなった。

毎日会社に行かなくてよくなった。

朝礼がなくなった。

定例会議がなくなって、

会社の飲み会もなくなった。

オンラインでできることが増えた。

無理して人に会わなくてよくなった。

 

 

他人に何かを強いられるのが大キライな性分だけど、今年の世の中の大きな変化は意外にもすんなり受けいれることができた(受け入れざるをえなかったけど)。

 

全人類が初めて直面している問題に対して、自分なりの解き方を自由に模索して試していいという状況はキライじゃなかったし、もはや夢中にさえなった。

 

不自由なはずなのに、なぜか充実した一年だった。

たぶん、今までのことをふりかえり、これからのことずっと考えていたからだと思う。

 

そういう意味で私にとっては、《特別な一年》だったと思う。

 

でも昨今のメディアにおいての「特別」という言葉の使われ方は大キライだ。

たしか、小池百合子が《特別な夏》と言ったのが始めだと思う。

《特別な年末年始》とか《特別な一年》とかって言うけど、「特別」という言葉ってもっと特別なんじゃないでしょうか。国語苦手やし知らんけど。

だいたい百合子とかメディアが使う「特別」は、別に「特別」じゃなくて「特殊」でいいんじゃないでしょうか。なんでそんなに「特別」を使いたがるん?

逆に自分にとって「特別」なことを「特殊」って言われるのもめちゃくちゃ違和感ある。

英語なら “special” でしかない単語を「特別」とか「特殊」、他数種類もの言葉を使い分けるくらいニホンゴは繊細なのに、メディアがそれを崩壊させてどうするん? 国語苦手やし知らんけど。

 

 

閑話休題

 

 

そんなふうに、そういうしょうもないことから、(自分にとっては)壮大な計画まで、膨大なことをずーーーっとひとりでお茶しながら考えていた。

考えていただけで一年が終わろうとしている。

 

絵に描いたモチだらけになってきたところでそろそろお正月だ(よかったやん)。

 

 

 

2020年が終わる。

そろそろ新しいことを始めたくなった。

そろそろ外に出たくなった。

ちがう喫茶店に移るのもいいかも。

 

会いたい人に会いたくなった。

今年考えていたことを、誰かに話したくなった。

 

待ち合わせの時間は、もうすぐ来るはずだ。

 

今年は一回も会いに行けなかったけど、

来年はきっと、会いに行くからね。

 

来年も4946ね。

 

 

 

 

2020年12月30日   235より