2020年度最終日の3月31日。
中野サンプラザにおける『志磨遼平万博 “IDIOT” TOUR 2020 ーTOKYO IDIOT』(以下:しま博)に行ってまいりました。
|| 1年越しのメモリアル・ツアー『IDIOT』。
2020年は、志磨遼平メジャーデビュー10周年のメモリアル・イヤーだった。
その特別な年と「IDIOT」を、2020年度最終日のしま博でわたしはようやくお祝いすることができた(ギリ)。おめでとうしま。
思えば、配信じゃないライブを観るのは2019年の『12月24日のドレスコーズ』以来、1年4ヶ月ぶりのこと。
ひさしぶりのライブと遠出。ヒョウかトラかで散々迷ったあげく、お気に入りのヒョウ柄のジャケットを着て、いつもより薄めのメイクとマスクで家を出た。
東京・中野駅前の桜は、はやくもはらはらと花びらを降らせていた。
それは、雨男の10周年を雨ではなく花びらでお祝いしているようで、(中野の桜、なかなか粋ね)なんて思いながら、開演予定時刻の中野サンプラザ大ホールにすべりこむ。
2017年にここでキヨシローのライブのしまを観たときは、2階席最後列壁の前だったのに、今日はステージぜんぶとメンバーの表情も機材も見えそうな前から数列目の予想外のよき席。
でも今日はこんなにおおきなホールにキャパの50%しか入れなくて、お客はマスクして声も出しちゃいけなくて、どんなライブになるん……と3秒くらい不安になったのち、
客電が落ちると、西クン(越川和磨)とうっしー(牛尾健太)のギターによる “バンドワゴン” のイントロで、会場客席は総立ち!3秒の心配のあと5秒で思わず立ち上がってしまう。
|| 10周年のファッションと毛皮のマリーズ。
ステージに飛び出してきたキング(しま本人)は、なんと!トラ柄セットアップ!!
トラ柄セットアップで登場のキング。(ナタリーより転載)
その瞬間(負けた!!!!!)と思うヒョウ柄の関西人。もっとハデでぎっらぎらにめかしこまなかったことをしま博開幕10秒でひどく悔やむ。
トラ柄セットアップでほぼトラのしまは「タイガー」をやるために今日は “贅沢とユーモア” か “カーゴカルト” が演奏されるのだろうと思った。(演奏されなかった。)
タイガー。(撮影・手:235)
よく見ると黒のリボンタイに加え、フリンジみたいなのも首からさげていて、ブラウスも素敵☆ 10周年にふさわしい衣装。
前髪あり。(SPICEより転載)
めちゃくちゃおしゃれ。コロナをいいわけにおしゃれをさぼってしまったことをわたしは深く反省している。
そしてまたひさしぶりに前髪を作っていることに気が付いた。センター分けもカッコよくてよいけど、やっぱり前髪あるほうがかわいいからすき。
2曲目は “ボニクラ” 。やはり10年前の毛皮のマリーズのメジャーデビューお披露目ツアー(『Restration TOUR 2010』)を思い出す。めちゃくちゃ思い出す。
でもこれは毛皮のマリーズではないし、あれから10年経っているのに(正確には11年弱)、今演奏しているこのバンドは毛皮のマリーズより毛皮のマリーズだし、西クンもいい意味で変わってないし、デビューツアーよりも、デビューツアーじゃないか!!!(個人の見解です。)
|| スガ・ウエノ
そんな華麗なオープニングナンバー2曲が終わり、最初のパビリオン(て呼んでいいのかな?失礼じゃないかな?まあいいか。)として登場したのは、まさかのウエノコウジ。
ウエノ(SPICEより転載)
ウエノ足なっげ!!!細っそ!!!カッコよさエグ!!!!なにすんの??と思っていたら、まさかのスガ・ウエノによる“ゴッホ”。(※注)スガウエノ:スガさま(菅大智さま)とウエノコウジによるユニット。武藤ウエノみたいなかんじで読んで。)
スガ・ウエノによる“ゴッホ”冒頭、息ができなくなるほどエグくて死んだ。
これたぶんほとんど即興。そんなかんじ。
“ゴッホ”後半は酸欠でおぼえていない。
ちょっと待て。ウエノのベイスで“REBEL SONG”イントロが聴きたいぞ(←妄想でウエノノ無駄使い)と思ったけど、“コミック・ジェネレイション”でウエノコウジ無事毛皮のマリーズに加入。
スガウエノ(ナタリーより転載)
|| 竹中直人さんドレスコーズに加入。
ウエノに続いてのパビリオン「た~けなかなおとさ~ん!!!(竹中直人さん)」(←しまのマネで読んで)が、バラの花束を持って登場。かっこよく花束をしまに手渡す。
花束贈呈。(ナタリーより転載)
しまがアコギ(J-45)を弾いて、竹中さんが歌う『1』のメドレー。
竹中さん、「『1』が好き」ってラジオで言ってた。
竹中さん “Lily” 好きすぎてしまにおねだりしたから、ラジオでアカペラの “Lily” が聴けた。
【ラジオ】TBSラジオ「竹中直人 〜月夜の蟹〜」にお邪魔して、大好きな竹中さんとおしゃべりします。第1夜はこのあと19時30分より放送。
— 志磨遼平(ドレスコーズ) (@thedresscodes) 2020年2月9日
16日(第2夜)23日(第3夜)と三週連続で登場します。お聴き逃しなく。#tukiyo954 #tbsradio pic.twitter.com/PzeBp8SpEI
“みずいろ” は竹中さんボーカルのフルコーラスで披露。
竹中さんが歌うと他の人が作った曲のようにも聴こえる。この曲を知らない人に「井上陽水さんの曲だよ。」て言っても信じてしまいそう。竹中さんが歌うことでまた違ったこの曲の魅力を感じた。
“みずいろ”歌唱中の竹中さん。(SPICEより転載)
竹中直人さんがドレスコーズでしま博に出演したという10周年の贅沢。
まだまだパビリオン2人目でこれ。しま博が終わるころにはわたしはどうなってしまうのだろうか……。
竹中さんはスキップで出てきて、スキップで去っていった。
「はやく来てはやく帰りたい♪」て言ってた。
|| ポエムの朗読。
竹中直人さんボーカルのドレスコーズによる“みずいろ”のあと、しまトラだけをステージに残し、一旦幕が下りる。
舞台のはしっこの教壇みたいなところにしまが立ち、ポエム(『THIS HEART OF MINE。』)の朗読がはじまる。
緞帳の前のタイガー。(SPICEより転載)
しまのポエムをきいているのに、フラッシュバックするのはなぜかわたしの10年の出来事ばかり。しまの10周年なのに。
それもそのはずだ。わたしの10年は、わたしとよく似たほぼじぶんなこの人の10年とともにあるのだ。
ちゃんと聞きたいのに、思い出すばかりでちゃんと聞けなかったポエム。
翌日のドレスコーズマガジンの「本と音」に載せてくれることを期待していたらやっぱり載せてくれて後でじっくり読むことができた。
|| the dresscodes with B
2017年のthe dresscodes with B(ドレスコーズ公式HPより転載)
最近のコは「with B」と言われても、なんのこっちゃわからんのではなかろうか。
the dresscodes with B の初ライブ(2017年@新木場 STUDIO COAST)の頃すでに、ブルゾンちえみ with B の活動も終焉に向かっていたと、元ブルゾンちえみさんのインタビューで読んだ気がする。
ポエムをちゃんと聞けなかったのにはもうひとつ理由がある。
転換の最中に聴きおぼえのあるギターの音がきこえたからだ。
JIMちゃんのギターからTHE BAWDIES(with B の「B」とは、BAWDIESの「B」。説明はずかしい・・・)の登場を予想して、気が気じゃなくなっていたのだ。
10数年前、わたしを毛皮のマリーズと出会わせてくれたのは、他にもなくこのBAWDIESだ。(くわしくは下記ブログをドウゾ。)
the dresscodes with B による “REBEL SONG” (ウエノではなくここだった!でもwith Bなら許す)。たっくん(TAXMAN)はやっぱりヒロTパートのコーラスがめちゃくちゃじょうず! ROY のベイスも悪くない(わたしの「悪くない。」「キライじゃない。」はかなりの肯定やで)。ていうか ROY を純粋な(歌わない)ベーシストとして観たのはthe dresscodes with B の初ライブが初めてで、ROY 本人もその日がベーシストとしてステージに立つのははじめてだと言っていた。ROY はボーカリスト・フロントマンのイメージが強いけど、実はめちゃくちゃベイス上手いんやな……と気付いたんだった。
わたしは ROY母と同じ名前。(SPICEより転載)
とにかく貴重だし、しま博でthe dresscodes with Bを観ることができたのは、わたしにとってとても贅沢なことだ。
わっしょーい!!(ナタリーより転載)
今日の日のために、はじめて武道館に立ったときのむかしのスーツを引っぱりだしてきてくれた BAWDIESでしまがいちばん好きな “LEMONADE” のしま和訳の歌詞も、むかしの「本と音」に載ってるよ。
志磨遼平デビュー10周年を祝うため
— ROY(THE BAWDIES) (@ROYTHEBAWDIES) 2021年3月31日
"the dresscodes with B"として志磨遼平万博に参加してきましたーっ!
出会って15年くらいかな!
これからも刺激し合いながら、時折りこうして集まろね!
久々に対バンもしなきゃね!
おめでとう!そしてありがとう! pic.twitter.com/qWBCyVFwNd
|| おとぎドレス。
2016年のおとぎドレス。(ドレスコーズ公式HPより転載)
「the dresscodes R.I.P. TOUR」(2016年)をともに旅したおとぎ話。
おとぎのホームは中野っていうイメージだけど、まさか中野サンプラでおとぎドレスが観られると思わなかった。
中野サンプラザのおっきなホールに響きわたる“メロウゴールド”のうっしー(牛尾健太)のギターソロ、めちゃくちゃ気持ちよかった。ほんとに気持ちよかった。気持ちよさで言うとこの日イチやった。うっしーも弾いててめちゃくちゃ気持ちいいやろうなあ……と思うぐらい気持ちよかった。これは会場で生で聴かないと体感できない気持ちよさだと思う。入浴に近い。ギターの音でこんな気分になるのははじめてだった。
うっしー(牛尾健太)。(SPICEより転載)
おとぎドレスといえば、「R.I.P. TOUR」といえばあの名曲 “平和” なんだけど、とてもたいせつで特別な曲なんだけど、今日はしま博で10周年のお祝い。おとぎドレスの “平和” は10年のたいせつな思い出としてとっておこうと思った。しま博ではやらなかったけど思い出してそう思った。
トラ柄セットアップ。ほぼトラ。(ナタリーより転載)
|| ギャングによる中野支配。
しま博イチの異端というか問題児というかいちばん主催にややこしがられそうなパビリオンが出てきた。
「dresscodes a.k.a. FUNK GANG」(通称:ファンクギャング)だ。
まさか出てくるとは思わんかった。「“meme” TOUR」終わったら消え去って行ったまぼろしのバンドだと思ってたから……。平凡さんも生きとったんか!(しかも髪伸びてるし!!)
でもそういえば「“meme” TOUR」の年の夏フェスにも出とったん忘れてた。平凡さん夏フェス仕様のクールビス仕様のスーツまでこしらえたり、その翌年ぐらいのイベントでもスポーティーな衣装でよみがえって登場してたし……、ファンクギャングはしつこいのを忘れてた。最近出てきてないだけやった。コロナで自粛してただけなんか。元気でよかった。
しま博の平凡さんは『平凡』ジャケのダブルのスーツではなく、クールビズ仕様だった。
山中治雄は赤スーツで平凡さんとは逆で髪の毛切ってた。髪切っても相変わらずチャラくてていうかチャラさ増してて脚長すぎで、赤スーツの山中治雄による赤い照明の中の中野サンプラでのファンクギャングによる“山中治雄Automatic Punk”(←これが曲名)はヤバかった。
真っ赤なスーツの山中治雄(短髪ver.)。(SPICEより転載)
たっくんが舞台袖からサッポロクラシック片手にファンクギャングのステージに見入ってるのが見えた。(そりゃそうなるわ。)
めちゃくちゃ気持ちいい “山中治雄Automatic Punk” からの “ヒッピーズ”もやってくれて(←この日の気持ちよさでは “メロウゴールド” に次いで2位)、ミラボ(ミラーボール)も有りで、ギャングの中野サンプラの乗っ取り方すごかった。DJポリスより渋谷のスクランブル交差点まわせそうやった。
平凡さんひさしぶり。髪伸びたね。(クールビズ仕様)。(ナタリーより転載)
|| 解散してもとなりにいる西クン。
再びオープニングのバンドメンバーが揃ったステージで、西クンがまさかのMCをとる。
中野サンプラの地下のスタジオで「Faust.C.D.」を作っていたこと。
そのときバンドの雰囲気は最悪だったこと。
そのときはまさかその上の中野サンプラのホールでライブをするとは思ってもなかったこと。
その日録音した曲は“ジャーニー”だったこと。
西クンは思えばいつも、しまに呼ばれることばかりだったと話してくれた。
「でも今日は俺があいつを呼ぼうと思う。」
西クン。(SPICEより転載)
|| そして誰もいなくなった。
アンコールは、しまひとりで出てきた。
アコギ(J-45)で、「10年後の“ビューティフル”」とも言われている“ピーター・アイヴァース”を弾き語るしま。
しまが歌う背後にセッティングされていた総勢約20名のメンバーの楽器と機材が、どんどん撤収されていき、ステージにはホントにしまひとりぼっちになってしまった。
ステージにぼっちのしま。(ナタリーより転載)
でも、ひとりだけどひとりには見えない。
人間はみなひとりだと思う。でも、この人には多くの仲間がいる。
西クンに呼ばれて、「NO MUSIC, NO LIFE?」のポスターの衣装で登場したしまが、“愛のテーマ” を歌うのを観ながら、こんなにたくさんのバンドマン(と竹中さん)に愛されているしあわせものの音楽家は、世界中どこを探してもいないと思った。
徳は孤ならず
必ず隣あり
「徳のある人は孤立することがなく、必ずよき理解者が現れる。」という意味だ。
しまは、この日じぶんのことを「バンドマン・志磨遼平でした。」と名乗った。
|| 配信で観た「12月20日のドレスコーズ≪EBISU REGRET≫」との比較。
この10年、150もの音楽家がしまに関わったという。(しまのポエムより)
その150もの音楽家のなかから、しま博に出てもらう20の音楽家や演奏する楽曲を選ぶというのは、なんという贅沢で大変なことなのか!(だって10周年だもん。)
いつぐらいからしまは、しま万博の構成(ていうか、ボウちゃんに来てもらうかとか、誰に来てもらうかとか)を考えていたのだろうか。
しま博の帰り道で、ケンゴマツモトが出演していなかったことに気が付いた。と同時に配信で観た「12月20日のドレスコーズ≪EBISU REGRET≫」を思い出した。
そうか、あの≪EBISU REGRET≫としま博で『IDIOT』か。
配信ライブについて、わたしはすごく可能性を感じているし、期待もしている。
だって配信があれば、ワールドツアー全通も夢じゃないし、
フジロックもライジングもすぐ行けるし暑くないし寒くないしトイレきたなくないし、
BAWDIESの紅布の配信無観客ライブを観たときは、ちっちゃいハコでやる超激レアチケットのライブも、これからは配信なら観られるんじゃないかと思ったし、
いろんな事情で今はライブハウスに来られない人たちも配信ならライブの時間さえ確保できれば、移動もなくライブを観ることができるし、
ミュージシャン側も配信でたくさんの人がチケット買ったらウハウハじゃないの?もっとやればいいのに配信と思っていた。
しかし、そんなニューノーマルな時代への期待を抱きながら「12月20日のドレスコーズ≪EBISU REGRET≫」を配信で観たとき、(しまった!!!行けばよかった!!!)と激しく後悔した。
前半の「QUIET」はまだガマンできた。
しかし後半の「RIOT」のライブは、このセットはああああ……!このメンバーはああああ……!生で観たかったああああ!!ここに居たかったああああ!!!
PCモニターに何度も映る、ステージサイドからねらった脚の長すぎるベルボトムで革ジャンのきれいなおにいさん(しま)の映像じゃなくて、きたなくてラウドな轟音を生で体感したかった!!!(クリスマスに恵比寿でラウドて……。)
それで3月31日は、どうにかして中野サンプラザに行こうと思ったのです。
12月は行ける状況じゃなかったので、配信があって本当にありがたかった。
でも、実際にその場に行かないと体感できないものがあるのは事実で、この先ライブのたのしみかたが多用化したとしても、じぶんが本当に行ったライブは特別な経験になるんだと思う。だからいっぱいライブやってね、ミュージシャンの人たち。
|| 志磨遼平の10年。
ここ数年、10周年をむかえたしまと同世代のミュージシャンは多い。
近いところの THE BAWDIES やおとぎ話はずっとバンドとライブを続けている。
音楽だけでなく、ドラマや映画でも主演するほど俳優としても活躍したり、音楽をきっかけにテレビによく出る人気者になった人もいるし、小説を書いて作品が賞の候補になった人もいる。
みんな活動はそれぞれだし、みんなすごいなあと思う。
でもわたしがいちばんすごいと思うのは、みたことのない活動をみせてくれるこの人だ。志磨遼平がみせてくれた10年は、この目ではもちろん見たことがないし、歴史上の人物でもこんな人は知らない。
わたしは志磨遼平が積み重ねてきた10年を誇りに思う。
シャーツ、ドット柄やったんか!(ナタリーより転載)
|| 突然発表されたニューアルバム。
しま万博の1週間後の4月7日0時に突然ニューアルバム『バイエル』が配信リリースされた。
また新しい、誰もやっていないことをやろうとしている。
でもわたしには、しまがやろうとしていることがとてもよくわかる。
まだ今は完成品ではないこのアルバムの成長を、つぎの百年、まずはたのしみにしている。
【志磨万博】あらためて中野サンプラザにお集まりいただいた皆さん、そしてメンバーに感謝と愛を。
— 志磨遼平(ドレスコーズ) (@thedresscodes) 2021年4月1日
一度にたくさんのプレゼントを渡されたような、贅沢でもったいない夜でした。この贅沢をまだつづけられるよう精進します。せめてあと百年。(撮影:森好弘)#志磨万博 pic.twitter.com/taa6VfnSHl
*しま博の写真はこちらの2記事から転載しました*