寺山修司の音楽劇「海王星」の地方公演ではじまったドレスコーズの2022年。
音楽劇「海王星」ツアーのセミファイナル弘前公演のための今年はじめての旅、青森。
そして大千穐楽の名古屋も観に行った。
好きなバンドを追っかけて旅をして、その街の建築や喫茶店を訪れることができたのは、3年ぶりのことだった。
今年は東京のライブハウスでもドレスコーズのライブをよく観た。
5月渋谷クアトロでの「ドレスコーズ + betcover!!」と、8月の「ドレスコーズ + 柴田聡子 in FIRE」。
それぞれのライブで、「エロイーズ」、「聖者」のシングルリリース発表と初披露がされた。
そして、7月8日の恵比寿リキッドルームでのライブは一生忘れないと思う。
この日ほど、好きな人の顔を見られること、音楽をありがたいと思った日はなかった。
10月には約1年半ぶりにオリジナルアルバム
『戀愛大全』が発表されて、
11月になると「戀愛遊行」ツアーがはじまった。
ツアー初日、札幌 cube garden の2階席から本編最後の曲のフロアとステージの様子を見ていると、
ああ、ようやくドレスコーズのライブの、いつものあの感じが戻ってきたなあ、と思った。
2日目、仙台 CLUB JUNK BOX のチケットは整理番号1番が取れた。
最前列ど真ん中から見上げた “ナイトクロールライダー” を歌うしまのシルエットは、息を飲むほど美しかった。
このツアーでは、(瞬きするたびにこの瞬間すべてをスクショできて、死ぬまで脳内に保存できたらいいのに……!)と何度も思った。
岡山公演までは1週間のブランクがあり、その間に高円寺でポップアップショップ & 展示があった。せっかくの機会なのに、そのタイミングでワクチンを予約してしまっていて、副反応の発熱で観に行けなくて残念だった。
完全復活して向かった3日目の岡山 YEBIS YA PRO では、バンドの演奏(特に田代くんのギター)が、ずいぶん変わっているように感じた。もちろん良い方向に。
ライブ中の雰囲気も、札幌仙台よりも更にメロウになっていて、しあわせだった。
しまもMCもどんどん甘くなってゆく。
アンコールでのしまの言葉はもはやデザートのスイーツ。
4日目の福岡 BEAT STATION だけ、どうしても都合がつかず観に行けなかった。先行予約で全公演チケットを押さえて、ギリギリまで調整しようとしたけれど、観に行けず無念…
いつもここではしまは魔法が使えてるんじゃないかと思うくらい、素晴らしいステージが観られるBEAT STATION での今回のステージはどんなだっただろうか。
5日目 名古屋クラブクアトロ。
どんどんすごくなる今回のツアー。
フロアいっぱいのお客さん越しにしまがよく見える特等席。
ミラーボールをお月さまにみたてて見つめながら “MAYBE” を歌うときのしまだけは、舞台女優のようだった。
かつてのしまは、そして毛皮のマリーズからずっとバンドが主役だった。わたしはずっと、毛皮のマリーズや、オリジナルドレスコーズ、または志磨遼平の物語を観ていたのだと思う。
ライブにしても、作品にしてもそうだ。
しかし、今年からどうもその感覚が変わったように感じた。
『戀愛大全』から、しまが主役ではなくなった。
『平凡』にしても『ジャズ』にしても、それぞれテーマはあれど、何度も聴きこむうちに結局はしまが自分のことを、そしてしまによく似たファンのことを歌っている作品のように感じた。
『バイエル』は特別な季節に作られた特別な作品で、だからこそしまや自分たちのそんな季節がスケッチされたような作品だったと思う。
『戀愛大全』は、誰かが主役の物語が10曲入っているラブソングの短編集だった。発売される前は、毛皮のマリーズの『マイ・ネイム・イズ・ロマンス』のような作品では?と予想していたが、『戀愛大全』の主役はしまではなかった。
音楽劇「海王星」のあとに作られた作品だから、そうなふうになったのかも… とも思ったけれど、音楽劇「三文オペラ」のあとの『ジャズ』はそうではなかったし、
ドレスコーズは今年、『戀愛大全』で新しいフェーズを迎えたのではないかと思う。
「戀愛遊行」ツアーを観ていてもそんなふうに感じた。
このアルバムとツアーが絶対似合うだろうなあと思っていた大阪・味園ユニバースでのセミファイナルの開場前に、ジュリアン・レヴィ監督と俳優さんたちが入っていくところを見た。
ユニバースに入ると会場後方にカメラが数台あった。開演前のアナウンスでも今日の公演が、映像作品になることが伝えられたが、今日ユニバースで撮影された一部の映像だけが、川崎での最終公演の映像に追加されるのだろうと思っていて、まさか大阪での公演だけが映像作品におさめられるなんて、正式に発表されても、まだ信じられない。
ずっと大好きな建築・味園ビルにあるキャバレー、味園ユニバースでの、いちばん好きなバンドのライブが映像作品になるなんて。
このツアーでは、何度もこれは夢なんじゃないか? と思ってしまう瞬間があった。
夢や、もうまぼろしになってしまったような、でも過去にコロナ前にわたしたちが確かに見ていた光景をドレスコーズはこのツアーではまた見せてくれて、それは「夢はかなうよ」なんて言葉で言われるよりも希望に満ちていたし、メッセージ性があるものだったとわたしは思う。
「戀愛遊行」という、セットリストのすべてがラブソングのツアー。恋愛や、誰かやなにかを好きでいることは何の役にも立たないし、それをやりすぎるとまわりに鬱陶しがられたり、否定されることもある。
でもしまは、絶対それを否定しない人。
しまがこのツアーのMCで毎晩、
「かなしい恋人たちも、しあわせそうな恋人たちも、なにかに夢中になったり飽きたりしているすべての人たちの、そのなにもかもがうまくいきますように」
と言ってくれるのが、とてもうれしかった。
ツアーファイナルの川崎 CLUB CITTA は、ものすごいライブだったセミファイナルの味園ユニバースに負けないぐらい最終公演らしい完璧なステージで、DVD にならないライブでそのときしか見られない奇跡が起こるというのは、オリジナルドレスコーズ時代からのあるあるだと思った。
比較的安定していたオトナメンバーに比べて、若きギターリスト・田代くんのこのツアーでの化け方は凄まじいものだった。
「戀愛遊行」ツアーのスペシャル版・番外編スペシャルのような「12月21日のドレスコーズ」でも、田代くんのギターはまた化けていた。
はじめて取れた恵比寿 The Garden Hall の最前列から観るステージのしまは、「戀愛遊行」ツアーよりも、バカラのシャンデリアよりもキラッキラで、しまのメイクもファンデーション変えた?てぐらいツヤっツヤで、めっちゃ肌きれいやった。(照明のせいなのかしら?)
「戀愛遊行」ツアーでは聴けなかった “ハーベスト” とケンゴ・マツモトのギターソロを聴けたのも、とてもしあわせだった。
しかし、音楽劇「海王星」から、「戀愛遊行」ツアー、そして「12月21日のドレスコーズ」と、さんざんラブソングを作って演奏した2022年の最後の曲が “愛に気をつけてね” なんて、わたしはどうすればよいのか。
「12月21日のドレスコーズ」から数日たった12月26日に事件がおこった。
「戀愛遊行」ツアーの最終公演でも、今年最後のライブ「12月21日のドレスコーズ 」でも発表がなく、ドレスコーズマガジンや出演したラジオでも今年1年さんざん匂わせられていたけど、詳細がわからなかったしまが音楽劇「海王星」直後に大量に曲を作ったお仕事が、モデル時代から20年以上好きな斎藤工主演竹中直人監督音楽志磨遼平(ドレスコーズ)主題歌ドレスコーズの映画『零落』で、しまもあほそうなフリーライター役で出演していて斎藤工と志磨遼平が共作で共演というとんでもないものだった。
大好きな味園ビルの味園ユニバースでのいちばん好きなバンドのライブが映像作品になるとか、
モデル時代から20年以上好きな人が主演の映画の音楽を好きな人が担当して共作で共演とか、
うれしすぎてよろこびすぎてショック死しそうや😭
「愛に気をつけてね」ってそういうことやったんか!!
そんな2022年のドレスコーズ。
今朝ドレスコーズマガジンから届いたしまのバースデー・メッセージには、もう2023 の文字が。(12月下旬にドレスマグは創刊され、わたしの誕生日はド年末のため、わたしのバースデー・メッセージにはもう翌年の年号が書かれてるのだ。)
目が覚めて、しまからのバースデー・メッセージを読んだらまたとてもしあわせな気分になった。(ドレスマグ読者は来年のお誕生日をおたのしみに)
2022年のドレスコーズの味園ユニバースの映像作品も、映画『零落』も観られるのは来年。
それを観るまでは死ねない。
来年もドレスコーズの作品やライブをたくさん観られますように ❤︎