コーヒーと私。

 

コーヒーが好きだ。

でも、むかしからコーヒーが飲めたわけではない。

子供の頃から喫茶店は好きだったが、クリームソーダティーソーダ、ミックスジュースが飲めたり、あのふわっふわのぶ厚いバタートーストが食べられるシブい洒落た空間だから好きで、コーヒーが好きというわけではなかった。

高校時代は予備校帰りに、HEP FIVE のスターバックスによく寄り道していた。そこでもオーダーするのはいつも、キャラメルフラペチーノのキャラメルソースとホイップを限界まで多めに入れてもらって(最初から入っているものの量を増やすのは無料)、もはやコーヒーの風味などうっすらとしか感じない飲み物だった。

 

コーヒーが飲めるようになったのは、社会に出てからだった。

新卒で入社した住宅会社で設計を任されるようになった頃、当時担当していたプロジェクトの建設地は結構な高級住宅街で、お客さんとの打ち合わせはいつもその建設地の近くの不動産会社で行われていた。

土日は午前、昼、夕方、夜と1日に4件打ち合わせがあって、お客さんに設計プランのプレゼンをして、仕様を説明して、ずーーーっと喋りっぱなしで喉がカラカラになった。

打ち合わせのときに不動産会社の方が出してくれていた飲み物が、毎回豆から挽いて淹れたこだわりのホットコーヒーだったのだ。プロジェクトが始まった頃はコーヒーが飲めなかったが、こだわりのコーヒーを断ることもできず、打ち合わせ中にコーヒーにミルクや砂糖を入れる暇もなく、渇いた喉を潤すためにはブラックコーヒーを飲むしかなかった。

たぶん、それがお客さんにも評判なとても美味しいコーヒーだったから、打ち合わせを重ねるにつれて、ブラックコーヒーを美味しいと思うようになり、今ではコーヒーがないと仕事ができない脳ミソになってしまったのだと思う。

 

そういえば、コーヒーが飲めない頃に一度だけコーヒーを美味しいと思ったことがあった。

卒業制作の提出直前、大学のスタジオで徹夜で作業していた日の朝方に、同じゼミの友達が、研究室で淹れたコーヒーを持って来てくれた。

あのとき、コーヒーは飲めなかったはずなのに、Kちゃんが淹れてくれた紙コップに入ったあったかいインスタントコーヒーの味が今でも忘れられない。

 

コーヒーが飲めなかったくせに、今では苦味が強い深煎りのコーヒーを好んで飲んでいる。カフェラテやカフェ・オーレは別として、ブラックしか飲めない。あと、酸味の強いコーヒーは苦手だ。

 

特に好きなコーヒーは、

大阪中崎町・書肆アラビクの「ブレンド・ネロ」。

西宮北口・ひばり珈琲に行くと「KENブレンド(深煎り)」か「勝新ビターブレンド(もっと深煎り)」で迷う。(KENとはもちろん高倉健。)

東京の神保町で古本を見たあとは必ず神田伯剌西爾(ぶらじる)で「仏蘭西ぶれんど」を飲んで、お土産にそのコーヒー豆も買って帰る。東京でいちばん好きなコーヒーだと思う。

そして、今とても博多・喫茶ひいらぎの「珈琲」の味が恋しい。前回、コロナ前にドレスコーズのライブ前に訪れたときは仮店舗だったけど、予定通りだともう元の場所に戻っているはずだ。

正しい街とジャズとコーヒー。 - ドレス・喫茶・建築

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去年、今年と喫茶店に行くことが激減してしまっていたけど、そろそろまた、全国の美味しいコーヒーを味わう旅に出たい。