『ジャズ 』10曲目の “Bon Voyage” を聴くと、
私はあの夏を思い出す。
*********************
“Bon Voyage” は、
今年の春に放送された、しまも出演した時代劇ドラマ『やじ×きた元祖・東海道中膝栗毛』の主題歌(やじ×きたVer.)で、やじさんきたさんの旅のために書きおろされた曲だ。
昨年の「12月23日のドレスコーズ」で早くも初披露され、おそらく『ジャズ』のなかでは最初に制作された “Bon Voyage” は、アルバムではブラス編成で演奏されている。
『ジャズ』の “Bon Voyage” をはじめて聴いたとき、まるで、Black Bottom Brass Band(以下:BBBB)のパレードみたいだな、と思った。
『ジャズ』におさめられているそのパレードのVer.を、私は特に気に入って聴いていたのだが、ある疑問が浮上してきた。
『ジャズ 』とは、人類最後の音楽。
つまり、『ジャズ 』には、12(曲)の人類最後のシーンがおさめられているのだと思っていた。
人類の滅亡や、世界の終わり、または死を連想させる楽曲群のなかで、
“Bon Voyage” だけは明るい曲調で、やじさんきたさんのために書かれた「旅」がテーマの歌詞。
『ジャズ』における、この曲の意味とはどういうものなのかがなぞだった。
その謎解きのヒントになったのは、「PARTY TOUR」がはじまる頃におこった、いくつかの出来事だった。
そしてそのいくつかの出来事は、あの夏の記憶をよみがえらせた。
中高と吹奏楽部だった私は、何度かお葬式でも演奏したことがあった。
いつだったかは忘れたけれど、
年の離れたOBの先輩が亡くなられた報せを受け、
先輩のお葬式で “聖者の行進” を演奏した。
お葬式で、しかも最後のお別れでみんな泣いている出棺のときに、なんでこんな明るい曲を演奏するのだろうと選曲に疑問を持ちながら、申し訳なさそうに演奏したのをおぼえている。
そして、あの夏とは、高校1年の夏休みのことだ。
あの夏、なんと……
泣くコもだまる(←トータス)BBBB のメンバーが、
私の高校の音楽室で……
我々吹奏楽部員のためだけにライブをして下さったのだ!!!(←自慢)
どういういきさつだったかというと、
顧問のN川先生が、YASSYさん(Tb)の大阪音楽大学での後輩だったので(BBBBのオリジナルメンバーはじつは全員大阪音大卒)、
その夏、コンクールが地区大会ダメ金(←専門用語)で終わって府大会に進めず、ヒマな夏を過ごしていた我々のために、N川先生が YASSY先輩にお願いをして、
「こういうカッコいい音楽もあるねんで?」と、
サプライズで我々のためだけの、
BBBBスペシャルライブをみせてくれたのだ!!!!
つまり、私は高1でBBBBの英才教育を受けている。(←自慢)
ライブ後にサックスパートで、
MONKYさん(B.SAX)のレッスンを受けたり、(←自慢)
当時メンバーだった MITCHさん(Tp)に、
私「なに食べたらそんな音出せるんですか?」
と聞いて、
MITCHさん「マクドナルド!」
と教えていただいたり、(←自慢)
部活が終わったあとみたいに、
BBBB のメンバーとみんなで音楽室の床にみんなで座りこんで、
BBBB のみなさんがいろんなお話をしてくださるのに、耳を傾けていた。
BBBB が何度も訪れているニューオリンズや、
いろんな旅先の路上で演奏されたお話。
いろんな国の文化や音楽、いろんな街での出来事。
そして、ニューオリンズのジャズ・フューネラルや、セカンド・ラインというパレードについても、ていねいにおしえてくださった。
(でも雑にWikiをリンクする。↓)
ニューオリンズでは、死者の天国への旅立ちをお祝いするために、“聖者の行進” をはじめ、明るい曲をたくさん演奏しながら街をパレードするのだ。
それを思い出したきっかけが、ドクター・ジョンの死と、彼のためのセカンド・ラインだった。
ドクター・ジョンのための盛大なセカンドラインの模様。ニューオーリンズの音楽葬。
— 志磨遼平(ドレスコーズ) (@thedresscodes) June 11, 2019
Dr. John gets a second-line sendoff in the Treme. https://t.co/fcc19uuvOB @YouTubeより
あと、ツアー直前に読んだこの素晴らしい記事も、なぞを解くヒントになったと思う。
ファンファーレ・チョカリーアの来日に際して柳樂光隆さんが書かれたこの記事↓ を読めば、ぼくの『ジャズ』の根源にあるジプシー音楽とその成り立ちを見事に総ざらいできますので、シェアいたします。
— 志磨遼平(ドレスコーズ) (@thedresscodes) June 4, 2019
https://t.co/OJxZOKivSc
そして、ドクター・ジョンが天国に旅立った日にスタートしたドレスコーズ A.K.A の旅「PARTY TOUR」。
このツアーで “Bon Voyage” は、アンコールで演奏された。
そういうことか……
これらの出来事、そしてあの夏の記憶が、
点と点がつながり、線となった…(←この表現あまり好きくないけど…)
なぞはすべて解けた。(←金田一)
やじ×きたVer.と『ジャズ』の “Bon Voyage” は、
テーマ(=旅)は同じだが、
意味がちがう。
『ジャズ 』における “Bon Voyage” の意味とは
つまり……
お葬式……
人類滅亡後の……
世界が終わったあとの…
死後の旅立ちのための歌なのだ。
そしてまた続く ふたりの日々よ ♪
だから、ニューオリンズVer.…
つまり…
人類滅亡後のセカンド・ライン……
おそろしい……
『ジャズ』とはおそろしいアルバムです……
なぞが解けたあと『ジャズ』をよく聴いてみると、
11曲目の “クレイドル・ソング” では、
「しぬのは こわかったわ」
と歌われ……
ラス曲、美しすぎるノイズまじりの “人間とジャズ” は、
霊界からこんにちは……
的な雰囲気がある……
つまり、『ジャズ』の10曲目 “Bon Voyage” 以降は、
死んだあとの曲なのだ。
だから、「PLAY TOUR」では、
本編ラスト “ニューエラ” で、世界が終了し、そのあとのアンコールで “Bon Voyage” が演奏されていたのだ。
(そして、来週11/20に発売される「PARTY TOUR」の映像作品では、アンコールはカットされ、Blu-rayのほうの特典では本編の前後にジュリアン・レヴィ監督による『ジャズ 』のためのショート・ムービー『THE END OF THE WORLD PARTY』のスピンオフが収録されているらしい!すごい!!)
はー……
だからアルバムではわざわざニューオリンズVer.のアレンジに変えていたんですね……
ニューオリンズVer.のアレンジである必要があったのですね……
しまの才能エグい……
天才か?
まさか、やじきた主題歌を書きおろすときからすでに、こういう設計図があったのか……
いったいどうやったらこんなことを思いつくのか……
おそろしい才能……
「人類最後の音楽」にはここまで描かれていたとは……
ありがとう、ドクター・ジョン。
……それじゃまた よい旅を!
ドクター・ジョンと若かりし頃のBBBBオリジナル・メンバー。
MITCH さんのInstagramより。