6年前の8月14日に発表された
そして5年前の今日はたしか、日比谷野音で
オリジナル・ドレスコーズ 最後のワンマン公演が開催された日だ。
開演前に流れていたマイルスも、
あの日演奏された『トートロジー』に収録されている “フォークソングライン(ピーターパンと敗残兵)” も、
風に乗って、自然と同化して、とても気持ちよかったのをおぼえている。
私は『トートロジー』の中ジャケが撮影された建築が、とても好きだ。
『トートロジー』の中ジャケは、
ここのエントランスホールで撮影された。
ライムストーン貼りの壁に、
写真のなかのしまが手をあてている位置を、
石の柄と目地の位置から特定して、
しまと同じ位置に立ち、
壁の同じところに手をあててみたが、
手足の長さと身長に大差があるので、
同じポーズはとれなかった。
いちばん好きなバンドが、自分の好きな建築で写真に写ったというブチ上がる案件で、彼らがいた位置に自分が今立っているというのに、私はいたって冷静だった。
それは、この建物だからなのかもしれない。
この写真は冬のお昼前に撮ったもので、
中ジャケが撮影されたのはおそらく6月の夜明け直後。
季節と時間が違うから、日の射し方もずいぶん違う。
無音のまま自然と同化しているこの空間で、
ルーバーの影と日の動きだけを眺めながら
永遠に過ごしていたくなる。
この建物の好きなところは、
建築のノイズ(余計な出っ張り)を徹底的に排除して、
静寂がデザインされているところ。
↑ 例えば階段の手摺も、出っ張りをなくすためにわざわざ壁に掘り込まれている。
展示室の照明器具や、あらゆる設備はすべて黒い天井や壁の中に埋め込まれ、身を潜めている。
法隆寺のお宝だけがぼんやり浮かんで見えるだけの静寂の空間で、ただ過ごすのが好きだ。
この建物でただ過ごすためだけに、
上野を訪れるといつも立ち寄ってしまう。
(法隆寺のお宝をちゃんと鑑賞したことなんて一度もない。)
ちなみにこの頃のアー写も、
同じトーハクの敷地内にある表慶館という建物の前で、
同じ日の、夜が明ける前に撮影されたのだと思う。
↑ ここな。
ジャケットをデザインされた信藤三雄さんは、
なぜオリジナル・ドレスコーズ に乞食の格好をさせて、ここで撮影しようと思ったのだろう。
去年の2月、
私はここで過ごしてからィヨコハマへ向かい、
KAAT で舞台『三文オペラ』を観た。
今度は(dresscodes)Beggars Quintet として、
また違うメンバーと音楽乞食を演じるしまを観ながら、
そんなふうに不思議に思った。