11回目の夏が来た。
今年は、観測史上最も暑い夏らしい。
東京も大阪も暑い。
もう、喫茶店とライブハウスにしか行きたくないので、クリームソーダを飲みながら、おとといの渋谷クアトロでのライブをふりかえる。
1曲目。しまのサングラスと田代くんのギターが夏らしいわね、と思ったけどふたりとも革ジャン。ロックンロールの人は夏でも革ジャン。
2曲目。夏に聴く冬の歌 “スーパー、スーパーサッド” 。
3曲目は、あの小野田少尉がモデルでもある夏の曲。2nd シングル『トートロジー』のB面でアルバムに入らなかったけど、何回再生したかわからないくらいとても好きな歌だ。
『トートロジー』がリリースされた9年前の夏、しまはキャンペーンで全国を飛びまわっていた。その頃はまだ radiko のエリアフリーがなかったので、京都まで α-station の生放送を聴きに行った。(同じ関西なのに大阪では α-station が入らないのだ。)
あのとき京都でしまがかけてたサングラスは、おとといの 1曲目でかけてたのとおなじかしら?
『トートロジー』がリリースされたあの夏も、ドレスコーズに夢中すぎて好きすぎて、色々思うことがあった。色んなことがあった2回目の夏。
4曲目、5曲目と、歌モノが続く。
柴田聡子 in FIRE との対バンならではのセットリストだと思う。
betcover!! のときとはぜんぜん違うツーマンライブ。
お呼びするバンドによってぜんぜん違うステージが観られるのがおもしろい。
しまも言っていたけれど、20年前に書いた歌詞も、7年前に書いた歌詞も、同じことを歌っている。音楽家としての成長や、バンドとしての変化はものすごいけれど、それは志磨遼平という人が変わらないでいてくれる記録だと思う。
そのくらい志磨遼平という人間性は、しまの歌詞にあらわれていると思う。
“ベイビー・モートン” のギターのイントロが聴こえた瞬間、ここ数週間の不機嫌が吹っ飛んだ。
まさか聴けるとは思わなかった。
ドレスコーズがデビューした10年前の夏、しまは「ぼくらは、バンドの誕生からすべて見せます。」と言っていた。
その言葉通り、オリジナルドレスコーズの誕生から終わりまでぜんぶを見せてくれた。
初の日比谷野音ワンマンも、4人のドレスコーズでのラストライブ豪雨の OTODAMA も夏だったね。
もちろんあの4人だけにしかわからないこともあるし、その後のそれぞれのドレスコーズにもメンバーだけで過ごした時間があるけれど、わたしはどのドレスコーズもずっと見てきた。
去年の夏も今年の夏も、この国はどうかしていると思うし、息苦しい。
去年の夏は史上初の1年遅れのオリンピックが開催され、ドレスコーズは緊急事態宣言発令中のフジロックに出演した。
長引くコロナ禍や、強行されたオリンピックとか、人々の色んなモヤモヤの矛先を表現者に向けられていたような気がして苦しかった。おかしな雰囲気だった。
そして今年の夏はライブの日に戦後最悪とも言える事件が起こってしまった。そしてその後の情勢にも、暑さ以上にうんざりしている。
しまにあんな顔させんなよ、ってホントに今でも腹ただしく思う。でもその怒りはどうすることもできず、自分で飲みこむしかない。
7月8日でのライブでも歌わなかった “ピーター・アイヴァース” のあの部分を、おとといのライブでもしまは歌わなかった。
まあそうなんだけど、しまの歌詞は毛皮ちゃん時代からブッソウなのも多い。
10周年記念すべきデビュー曲 “Trash” も、今は歌いにくいと思う。コルトガバメント。
5月の betcover!! のときにハルヲのベイスでひさしぶりに聴けてよかった。
おとといのしまは自らお口チャックのようなかんじて口をふさいでいた。
ドレスコーズとのどの夏もわたしは一生忘れられない。
楽しかった思い出も、胸がつまるような想いもぜんぶ、上書きされずに頭と心に蓄積されてゆく。
11回目の夏も、大好きなライブハウスでドレスコーズを観られて、新曲も聴けて最高にしあわせ。
サマーチューンとクリームソーダがあれば、ここはすてきな夏。
冬でもクリームソーダ飲むけどね!