2010年代最後の12月24日のドレスコーズ。

年が明けたけど、去年の話。

古い話をするのはあんまり趣味じゃない、から、あんまり古くならないうちに。

毎年恒例となりつつある、恵比寿The Garden Hall でのドレスコーズのクリスマス・コンサート「12月24日のドレスコーズ」。

前年同様、バカラの壮大なツリー? シャンデリア?(←どデカすぎてもはや何かわからん)の前で記念撮影をするために並ぶカップル、ファミリー… 今年も彼らと自分との人種のちがいを感じながら、早足で恵比寿ガーデンプレイスを駆け抜けて、会場へ入場。

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バカラの前で記念撮影するカップル。

 

会場に向かう前、恵比寿にあるのに「銀座」という喫茶店

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友と、誰の演奏が観たいか、グッズのデザインがケンゴマツモトだから、今年のギターもケンゴマツモトだろうか…などと、ライブに備えてパフェを食しながら、今日のメンバーを予想した。

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沢尻エリカ様も映画の撮影で訪れた喫茶店で食べたパフェ。

 

まだ開場されたばかりの会場に入場するや否や、ステージ近くへ急ぎ、ステージのセッティングを見てまずはわかる範囲で答え合わせ。

スガさま(菅大智)のドラムセット。

ケンさん(福島健一)のサックススタンド。

ぴょんさま(有島コレスケ)のアンプとアップライト・ベイス。

ギターは……?

鍵盤もある。

ギターの横に、透明のパーティションが立てられ、椅子が2脚。ストリングス… バイオリンとチェロあたりが入るのだろうか?

去年のクリスマス・イブに開催された令和元年最初の「12月24日のドレスコーズ」は、よく考えたら 2010年代最後に観たライブだった。そしてよくよく考えたら 2000年代最後に観たライブも、毛皮のマリーズだった。

 

2019年の神曲と、西クンとの再会。

2010年代最後のライブの1曲目は、まさかの “ニューエラ” で、ドレスコーズ 2010年代最後のギターリストは、まさかの西クン(越川和磨さん)。

まず、西クンが『ジャズ』を弾いているという事実に、ひさびさに西クンのギターを聴ける高揚よりも動揺(←韻)。

 

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神々しすぎるショットで誰だかわかりませんが、西クン(越川和磨さん)です。(撮影・森好弘)

 

去年(2019年)発表された『ジャズ』(←『ジャズ』全曲レビュー参照)のなかでも一番びっくりした曲が、“ニューエラ”(←『令和元年度吹奏楽コンクールⅥ課題曲「ニューエラ」』参照) だった。

そんな “ニューエラ” ではじまるライブは、バイオリンとチェロが入り、ケンさんがバリトンサックスで数曲低音にまわるいう贅沢すぎる編成。2010年代最後の特別なライブ。

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バリトンサックスを演奏するケンさん。(撮影・森好弘)

 

10年後の『Gloomy』再現演奏。

“チャーチにて” からはじまる『Gloomy』再現演奏。

しまがこの曲を歌うのは、2014年9月末にオリジナル・ドレスコーズからまるやまハルヲスガさまが脱退したばかりの10月のミナミホイールで、ラジカセを持ってぼっちで当時した、なんば Hatchのステージ以来。たぶん。

いつ聴いても懺悔のような曲。スガさまとぴょんさまがすずを鳴らす。

『Gloomy』が発表されてから10年。まさかストリングス入りの『Gloomy』再現演奏を10年後に座って鑑賞するなんて、10年前は誰も想像しなかっただろうな。

もはや再現ではない演奏レベルの『Gloomy』の再現演奏は、ストリングスのおふたりがめちゃくちゃ、素晴らしかった。

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伊藤 彩さん(Vl)と今井香織さん(Vc)(撮影・森好弘)

 

『Gloomy』の曲、特に “人間不信” とか、ストリングスどうするん? 待機しとくん? と思っていると、

轟音に合わせて粗悪な低音を響かせるチェロ。

そして、キュゥゥゥウウウウンンン!!!と高音をさらに上空で歪ませるバイオリンに耳を疑った。

バイオリンで歪みて……

二度見ならぬ、二度聴き。 

なんか… クリスマス・コンサートにやってきてくれた、きれいなクラシックのおねいさんたちかと思っていたら大間違いで、暴走族(レディース)の総長が、じつは学校イチの秀才(しかもお嬢様)だった。みたいなとまどい。

伊藤さん(Vl)と今井さん(Vc)がときおり西クンのほうに目をやる。

西クンの呼吸におふたりが合わせて、西クン率いる弦楽三重奏のアンサンブルを聴かせてくれるシーンが何度かあった。

えらくなったな、西クン。

弦楽三重奏のアンサンブルの轟音は、個人的にはこの日イチのハイライトだったと思う。

あと、スガさまの『Gloomy』 のドラムがヤバい。高円寺のキース・ムーン(スガさま)が『Gloomy』を叩くと、こうなるのか……。

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(撮影・森好弘)

このメンバーでの “人間不信” とか。あと、2曲目の “エリ・エリ・レマ・サバクタニ” とかのスガさまのドラムを聴いて、座っていないといけないのが、つらかった……。

 

 

“平和” で泣かなかった。

ドレスコーズでのライブ(「R.I.P.TOUR」2016年)でもいっときよく聴けた “平和” 。西クンとの “平和” を聴くのは、毛皮のマリーズ「コミカル・ヒステリー・ツアー」(2010年)以来ではなかろうか。

本物のストリングスが入った演奏の “平和” をはじめて聴く。

しまが泣かない対策なのか(←しまは“平和”を歌いながらいつもぼろぼろ泣く。)、テンポも割とさらっと演奏されている印象。しかしこちらは贅沢な音色と音圧も手伝ってうるうるきてしまう。

“平和” はギリギリ泣かなかったけど、そのあとの “ハーベスト” で号泣。(私が。)

スガさまのドラムと、西クンのギターソロの “ハーベスト” とかずるい。一曲ずっと泣いてた。(私が。)

『Gloomy』再現演奏もあったのだけど、“ハーベスト” や “Silly Song , Million Lights” をスガさまのドラムでまた聴けたからなのか、オリジナル・ドレスコーズのあの素晴らしい「(More Pricks Than)KICKS TOUR」(2013年)を思い出した。

ソロまわしでクリスマス・ソングをはさんでくれる伊藤さん(Vl)と今井さん(Vc)の気づかいで、今日がクリスマス・イブだということを思い出す “贅沢とユーモア” で、贅沢すぎる特別なライブの本編が終了。 

 

 

 

ささやかなプレゼント。憂鬱なクリスマス・イブ。

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クリスマス・イブが毎年憂鬱なのは、恋人もサンタクロースも不在だからだけではなくて、(マリーズ)メイニアにとっては、8年前のクリスマスの記憶があるから。

2011年の6月、毛皮のマリーズのホームページで突然はじまった謎のカウントダウン。そしてこの年の 9月に発表された毛皮のマリーズのアルバムがラストアルバムであり、12月31日をもって解散すること、『THE END』というアルバムタイトルとアートワークは発売日にはじめて明かされ、メンバーとごく身近なスタッフ数人しか知らなかった。

しかしそのホームページ上のカウント・ダウンが「0」になる日は、毛皮のマリーズが解散すると予告された 12月31日でもなく、日本武道館でのラストライブが行われた 12月5日でもなく、クリスマス・イブの 12月24日から25日に日付が変わった瞬間だった。

カウントダウンが「0」になったとき何が起こるのか、様々な憶測が飛び交っていたが、毛皮のマリーズがメイニアたちに用意してくれていたのは、ささやかなプレゼント・ “クリスマス・グリーティング” とメンバーからのメッセージだった。そしてその音声を聴き終えると、画面上の「un deux trois」が「adieu」に変わるという演出だった。

2011年の12月31日が終わり、年が明けた瞬間、バンドとともに、毛皮のマリーズのオフィシャル・ホームページと、しまのブログ「コックサッカー文學」が WEB上から消滅するという、徹底された美学。悲しみにくれながらもその美しさに感動した毛皮のマリーズ解散の瞬間をよくおぼえている。

 

ところがその数分後の、2012年になってすぐ、しまはドレスコーズとしてまるやまスガさまと3人で(ハルヲはまだいない)初ライブをするんですよ。

 

脱線しすぎたし、古い話をしすぎたので、話をもどすと……

そう、あの衝撃的で美しい付線と演出がトラウマになっていて、今でもお知らせの予告に憂鬱になったり、いちいち深読みするクセがついてしまった。ハッピーなはずのクリスマスだけど、あの8年前の雪のクリスマスを思い出して、たぶんひとりでいるとしんみりしてしまうから、私はこれからも毎年こうやって、わざわざクリスマス・イブに東京まで足を運ぶと思う。

この日も開演直前に、謎のツイートが。

 

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8年前にくらべるとだいぶ肝もすわってきたけれど、こういうのにはいちいち構えてしまう。

まだアンコールが終わっていない。アンコールで何かあるのか。

アンコールを待つ間にあの謎のツイートを思い出してしまっていると、その憂鬱をほぐすように、事務所社長がステージにキャンドルをならべてくれる。

再びメンバーがステージに現れて、ひかえめな照明のままキャンドルが灯るステージで演奏したのは、“クレイドル・ソング” だった。今年の「PARTY TOUR」では演奏されなかったけど『ジャズ』におさめられている大好きな歌。しまはステージの前方に座り、キャンドルを手にとって歌ってくれた。   

“ビューティフル” も “愛に気をつけてね” もやらなかったけど、特別なクリスマスライブ。

西クンは20代の記憶を一体どこに置き忘れたのか、照れてたのか、しまがとなりに来るとなぜかマイクからよけるから、しまもカメラマン森さんも(私も)ずいぶん待って、最終的にしまが西クンの頭ぐいっ!てやって撮れたのがこの写真。

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(撮影・森好弘)

このツーショットを2010年代最後にもう一度見られたことが、メイニアにとっては、最高のプレゼントだったと思う。

 

 

付線の回収。2020年のお知らせ。

そして、まあまあどぎまぎした開演直前の謎のツイートは、このことだった。

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アンコールで発表されて、ライブ後会場の出口でも特設サイトのQRコードが印刷されたステッカーが配られた。(開演直前の謎ツイートのロッカーに貼られてたのと同じだと思われる。)

2020年メジャーデビュー10周年イヤーのお知らせ。

もうホント、いいお知らせなら普通によろこばせてほしい……

でもまあ、毎回付線混みでたのしんでいるんだけど。

 

「ID10+」と書いて「IDIOT」。

もしかして、東名阪のツアーは ID チェックがあったりして。

マイナンバーカード、作ってたほうがいいですか?

いまだに、年があけてもいちいち深読みしてしまう。

 

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ジャズと建築。

 

人類最後の音楽の最後の曲。

人類最後の音楽『ジャズ』最後の曲 “人間とジャズ”。

レコーディング中、奥野真哉さんがこの曲のピアノを演奏されているときに、しまは『ジャズ』というアルバムタイトルを閃いたらしい。

f:id:madorigirl:20191229130409j:image↑ もはや誰だかわかりませんが、2019年日本で2番目にいいアルバム『ジャズ』を発表したドレスコーズ・志磨遼平さんです。

 

 

美しく汚された音。

奥野真哉さんが弾く、完璧に調律されたスタインウェイのグランドピアノの音色。そしてしまの歌とぴょんさま(有島コレスケ)のコーラスだけで構成されるこの楽曲。

しかし我々は、きっと美しいであろう、このシンプルなバラードを、録音時の生の音で聴くことはできない。(他の曲もまあ、そうだけど。)

なぜなら、『ジャズ』に収録されている “人間とジャズ” の完成形の音は、ズタボロに化粧されているから。

斫り(はつり)仕上げみたいな。

f:id:madorigirl:20191229143732j:imageコンクリートの斫り仕上げの柱 ↑。京都・ぎおん石 喫茶室。

ガッサガサなのに、ためいきが出るほど美しい音。

ここまで加工されるのであれば、別にスタインウェイでなくてもよいのではないかとも思うが、きっと上質な材料(奥野さんが演奏されたスタインウェイの音色)を使っているからこそ、これほど美しく仕上がるのだろう。

 

 

音楽の現場と、建築の現場。

レコーディングスタジオに行ったことはないが、建築と音楽の制作現場はきっとよく似ているのではないかと思う。

職業柄、私は『ジャズ』を聴いては、その美しい音楽の制作現場(=レコーディングスタジオ)を、建築現場に置き換えて想像してしまう。

失礼を承知の上で、脳内を文字化してみる。

 

『ジャズ』の音楽的なコンセプトは、≪まもなく没落をむかえる、架空の民族の、架空の伝承歌。≫ また、古典的なジプシーブラスを現代的に響かせるという挑戦である。そんなこの世に存在しない音楽を創造するにあたって、しまは多くの専門家たちに手を借りた。

ホーン・アレンジを担当された梅津和時さんは、人間国宝の宮大工のような方だと思う。しまのスケッチ(デモ)をもとに、棟梁(梅津さん)と実施設計図(しまのデモに梅津さんがサックスとクラを重ねたデモ)をおこし、梅津さんといくつもの現場を共にしたベテランの職人(演奏家)たちがレコーディング・スタジオに集結。しまと梅津さんが準備した実施図をもとに、着工されるや否やサクサクと各パーツが組み立てられていく。

 

≪棟梁・梅津和時さん(Sax,Cl)が連れてきてくださった一流の職人たち。≫

  • 多田葉子さん(T.Sax)
  • 北陽一郎さん(Tp)
  • Gideon Juckes さん(Tub)
  • 照喜名俊典さん(Euph,T.Hr)
  • 渡辺庸介さん(Perc
  • 佐藤芳明さん(Acc.)
  • 太田惠資さん(Vl)
  • 早川岳晴さん(Ba)

エリ・エリ・レマ・サバクタニ”、“プロメテウスのバカ”、“わらの犬” で演奏して下さったスカパラ加藤(隆志)さんと欣さま(茂木欣一さん)は、子供の頃から大好きな現代画家に大広間の壁画、そして建物の表札を描いていただいたという感じかしら。

 

一流の職人たちのすごいところは、実施図に描きこまれていない細かなイメージを、しまの指示のわずかな言葉のニュアンスをも正確に捉え、一瞬で表現するところだ。もっと彼らの工事(演奏)を見ていたい(聴いていたい)と思うが、プロフェッショナルの仕事は速く、きっと明日にはもう、次の現場が彼らを待っているのだろう。

 

 

ありえない工程の現場。

この現場の特殊なところは、建物の内装(ホーン・セクション)を先に録音し、既に出来上がった内装(ホーン・セクション)に合わせて土台と骨組みを作るというありえない工程である。

しかも内装を担当したのは大御所の演奏家ばかり……という無茶ぶりに対応して土台を組んでくれるのは、若手のエースたちだ。おそるべき現場対応力……。

  • ナガイケジョーくん(SCOOBIE DO):Ba
  • ビートさとしくん(skillkills):Dr
  • スガさま(菅大智さん):Dr,Perc

 

エンジニアの奥田泰次さんは、細かな各工程を録り終えてはしまと現場確認し、テクスチュアを構築していく現場監督だろうか。

ベテランの職人、大好きな画家……錚々たるメンバーが去っていったあとの現場をとりあえず掃除(?)しながら心を落ち着けていると、次にやってきてくれたのは、しまを様々な現場で助けてくれるいつもの仲間、そして先輩方である。(敬称略)

  • 有島コレスケ(ぴょんさま):Gt,Cho
  • 牛尾健太(おとぎ話):Gt
  • ケンゴマツモト(THE NOVEMBERS):Gt
  • 中村圭作:Pf
  • 奥野真哉:Pf

 

日本一エッチなギタリスト・ケンゴマツモト(from THE NOVEMVERS)はギタリストなのにあまりギターを弾かずに “ニューエラ” にニュアンスを重ね、さっさと帰っていったらしい。しまはあまり細かな指示を出していないのに、仕上がりは完璧。言葉はいらない、手が速い、エロい。

 

エリ・エリ・レマ・サバクタニ” の透明感があって、いい感じにかすれてセクシーだけどフレンチロリータぽいウイスパーボイスな美声の(←こんな声になりたい)コーラスの佐藤多歌子さん(お名前もすてき)は、『ジャズ』のレコーディング中に出会ったシンガーらしい。

竣工間近になってもイメージに合ったシアーカーテンが見つからず、それが見つかればほぼ完成なのに見つからず、悩みまくって気分転換に Bar に飲みに行ったら、偶然となりで飲んでいたのが、ファブリックメーカーのデザイナーで、翌日確認していただいたら、昨夜聞いたイメージにピッタリの商品開発中のオーガンジーの生地を特別に縫製して下さることになった(←実話)。佐藤さんとの出会いは、あのシアーカーテンとの出会いに似ていると思う。(ごめんなさい……)

 

そして、前述の “人間とジャズ” の斫り(はつり)仕上げを施して下さった荒木正比呂さんは、内装の最終的な質感を加える(または削ぎ落とす)前衛的な表現も得意とする左官職人といった感じだろうか。 

 

完成した建築(音楽=『ジャズ』)の中で過ごすほど(聴けば聴くほど)、最初は気付かなかった細かなディテール(音のニュアンス)を見つけ、盤1枚の中には明らかに容積率オーバーな情報量がこめられているのだが、そのどの音も無駄がなく重要だということに気がつく。

 

 

音楽における志磨遼平の役割。

建築に置き換えると、ドレスコーズのオリジナルアルバムにおいてのしまの役割は施主兼設計者だと思う。歌はもちろん、細かな工事も自ら担当する。“チルってる” のエレキギターとか、“カーゴカルト” のガットギターとか、控えめに言って上手い

楽曲提供の場合は、提供先のアーティスト(=発注者。今年でいうと菅田将暉さん、上坂すみれさん)が施主で、しまは設計者。『三文オペラ』、ダルカラ『マクベス』では、谷ちゃん(演出家)が施主かな。

 

『ジャズ』を聴くと、その壮大な音楽の素晴らしさを感じるとともに、連譜の多さやテンポ、音のバランス…… 細かな色んなところに素人ながらゾッ……とする。人間国宝の棟梁(梅津さん)や、大御所さんたちにものすごいことを要求しているな……と思う。本当に、このメンバーがそろったからこそ奇跡的に完成したまぼろしのアルバムだと思う。『ジャズ』には全く妥協が見えない……。

「言うのは簡単。」そう、私もいつも思う。わかっています……。そこだけは譲れないハッキリしたイメージがあって、さらさら~…と描いた詳細図。図面上は、計算上は、成立している。ただ……(誰がどう施工するねん?)というとてもむずかしい納まり。現場ではそんなむずかしい納まりを熟練の職人さんたちは長年の経験と知恵でどうにか方法を考え、魔法のような技術で仕上げて下さるのだ。(いつもありがとうございます……!)

『ジャズ』を聴くたびに、どうやったらこんな音楽思いつくん!とひっくりかえるけど、ハッキリしたイメージがあって、むずかしいけど妥協できなくて、梅津さんたちと相談しながらなんとかイメージ通りに作り上げるしまの心境は、そこだけはすごく理解できる。よう言うたと思う。(←なぜか上から) 

 

 

最新のジプシー音楽。

かつて私がしまと出会う前に通ったブラスバンドや、ニューオリンズ・ジャズ、2TONE SKA 、そしてジプシー音楽の要素を取り入れた『ジャズ』は、今年らしい最新の音楽でありながら、とても懐かしく感じる。

『平凡』でファンクにたどり着き、『三文オペラ』では演劇の世界へ。私にロックンロールをおしえてくれたしまが未知の場所へ進むのを、見失わないように10年以上追いかけ続けたら、なぜか自分の実家に帰ってきたような。『ジャズ』を聴いて、ひとりの音楽家の歴史と、知らない時代の知らない国の誰かの歴史が、音楽で自分とつながるような不思議な感覚がこみあげた。

ひとりの音楽家が10年間かけてたどり着き、その旅路をすべて込めたアルバム、それが『ジャズ』。

私にとってはダントツで2010年代最高の作品。

(ミューマガでは2位でしたが。)

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10周年の2020年もまた、しまが作る素晴らしい音楽に出会えますように。

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◆参考文献◆

 

hyperurl.co

“銃・病原菌・鉄”と、“鶏と蛇と豚”。

 

 

令和元年は、多くの名盤が発表された年だった。

そして私の今年の視聴回数ベスト3 はどれも 5月に発表されている。

 

ドレスコーズ『ジャズ』
椎名林檎三毒史』
EGO-WRAPPIN' 『Dream Baby Dream』

 

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令和を迎えた日の渋谷の街 。

 

 

『ジャズ』と『三毒史』。

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3文字のアルバムタイトルと、靄のなかに佇む肖像。新作の情報が公開されたとき、しまと林檎ちゃん(だけではなくたぶん多くの芸術家たち)は今、同じことを感じ、考えているのではなかろうか…と勘付いた。

「人類」がテーマのふたつの作品。

『ジャズ』が人類の滅亡を記録した、「人類最後の音楽」であるのに対し、『三毒史』には「人類の歩み」、そして「生から死」をアルバム1枚を通して時系列で描かれている。

10年以上キャリアの差があり、性別も違うふたりを、実はよく似た音楽家なのかもしれないと思いはじめたのは、しまがドレスコーズを結成し、その活動が公になった頃だった。

 

 

或る閏日の出来事。

東京に大雪が降った7年前のある日、当時、志磨遼平丸山康太菅大智の3人組だったバンドに、ベーシスト山中治雄の加入が決定した。

都内の小さなスタジオで、ドレスコーズというロックンロール・バンドが誕生したその日の同じ時間に、日本武道館では、東京事変の最後の公演が行われており、事変はこの日を以って解散した。

それは、2012年2月29日。閏日の出来事だった。

  

  

没個性、メンバーの才能を生かす。

ドレスコーズの前作『平凡』のテーマが「没個性」だったことは記憶に新しいが、ドレスコーズ の1st 『the dresscodes』(2012年)が発表された頃のインタビューを読んだとき、私は東京事変の『娯楽(バラエティ)』(2007年)を思い出した。

毛皮のマリーズ時代は全曲作詞作曲を担当し、2ndアルバム『ティン・パン・アレイ』(2011年)は、ほぼ単独で制作したしまだったが、オリジナル・ドレスコーズの作品の作曲はすべて、志磨遼平ではなくドレスコーズ名義になっている。特に1st アルバムは、ほぼスタジオでのセッションで生まれたらしいし、しまがプロモーション活動で不在時に、丸山康太山中治雄菅大智の3人だけで作った楽曲もある。

事変のほとんどの楽曲の作詞・作曲を手掛けてきた林檎ちゃんが、前出の3rd アルバム『娯楽(バラエティ)』では、作曲をすべて他のメンバー(浮雲伊澤一葉亀田誠治)に任せ、自身は歌唱と作詞に専念した。

彼女がそうしたのは、彼らの作家としての優れた才能を存分に出すため。そして、彼女が事変結成時から常に「個人ではなくバンドとしての表現」を目指していたからだった。

毛皮のマリーズというバンドを失ったしまは、生まれたばかりのドレスコーズに、自身の言葉や歴史をかぶせてしまうことをひどく恐れていたし、とにかく自分の大好きな3人のメンバーの才能をみんなに自慢したかったのだと思う。オリジナル・ドレスコーズ時代のしまはずっと、バンドの4分の1の存在になることに憧れていた。

このメンバーでの活動は 2年半で終止符を打ったが、私は志磨遼平丸山康太山中治雄菅大智のあの4人ドレスコーズは、ちゃんとバンドだったと思うし、私は今でも、世界一カッコいいロックンロールバンドは、あの4人のドレスコーズだと思う。

  

 

音楽監督としての経験。

劇伴のお仕事も多い林檎ちゃん。

f:id:madorigirl:20191125220601p:image(↑ Wikipedia椎名林檎」より転載) 

 

昨年しまが音楽監督を担当したのは、91年前のベルトルト・ブレヒトとクルト・ヴァイルによる音楽劇『三文オペラ』。ドイツで生まれた作品が、演出家・谷賢一との若いふたりのタッグにより、90年後の横浜KAATで上演された。

 

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誰もがタイトルぐらいは知る名作。劇中の大半が音楽で、そのすべての音楽の編曲と訳詞。(ていうか劇中の言葉の半分以上が歌で、その訳詞だからほとんどセリフの訳みたいなかんじ。)

そして劇の本番中も伴奏兼乞食役でずっと舞台の隅っこにいて、演奏してるか、じっとしてるか、歌ってるか、わめいてるか、鍋食べてるかで、初の音楽監督なのにいきなり仕事量すごいなと思った。音楽監督っていそがしいな。

 

そして今年も同じくKAATで12月12日から12月22日まで上演された、劇団・DULL-COLORED POP によるシェイクスピアの『マクベス』でもしまは劇中音楽を担当したので、約2年ぶりの谷賢一氏との共作を観ることができた。

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来年1月11日公開のアニメ映画『音楽』の主題歌 “ピーター・アイヴァース” も情報解禁されているが、

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そのうち主題歌だけでなく、林檎ちゃんみたいに映画全編においての劇伴を担当する作品もでてくるのではないかと思う。

(今気づいたけどふたりともラーメンズと仲いい。林檎ちゃんは小林賢太郎さん、しまはギリジンさん。 )

 

 

フロントも張れる体質で、プロデューサー気質。

しまと林檎ちゃんの音楽も好きだけど、私は単純にふたりの顔ファンだ。なんもしてなくて立ってるだけでもサマになるし、かっこいいしかわいいからマネしたい。

ふたりのすごいところは、楽曲提供も多くプロデューサー気質なのに、フロントを張れるフィジカルな魅力も持っているところだと思う。

渋谷系でいうと、小西(康陽)さんと野宮麻紀さんをひとりでやれるような人たちだと思うし、ホント天才だと思う。

こんな記事が出たばかりだけど ……

natalie.mu

ふたりとも自身を「新宿系」と公言していた時期もある。

 

 

気分屋な自作自演屋。

『平凡』と「“meme” TOUR」、『三文オペラ』と「PLAY TOUR」と緻密で演出性のある作品や公演が続いていたと思ったら、突然夏に「360°完全解放GIG」とかやるし、そしてその次のクリスマス・ライブ(昨年2018年末「12月23日のドレスコーズ」)は、宗教がテーマ……。

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そしてしばらく静かに制作期に入ってたのかなと思ったら、完成させてきた作品が「人類最後の音楽」……アーメン

しまのバイオリズムは時々高低差ありすぎて耳キーンなる。

 

男性は毎日同じ時間に起きて出勤して同じ時間仕事をして同じ時間に帰って寝てといったルーティーンが得意な生き物なのに対し、女性は男性に比べるとそれが苦手な生き物である。だって生理があるから。体調や気分のバイオリズムに左右されるから、毎日同じ感情で同じことをするのが苦手な生き物なのだ。ということは、しまは女の子なのか?

だから女装とか女性目線の歌詞が多いのか?

まあ、しまは他人に決められたルーティーンを守ることが極端に苦手そうなのは観ていてわかる。(自分もそうだけど。)

そういえば、しまも林檎ちゃんも高校を中退している。

 

 

「女の子たちの人生のサントラになっててほしい。」(by 椎名林檎

私も一応女の子だし、気分の浮き沈みが激しい。月のバイオリズムの影響もあるけど、メールひとつでいちいち感情が激震する。いくら好きな音楽でもいつでも聴きたいというワケではない。

たとえば、とても大好きなふたりのデュエットで、とてもとても大好きな楽曲だけど、林檎ちゃんとトータスの、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルばりのソウルフルな “目抜き通り”(『三毒史』12曲目) は、体調によっては(うるさいな……)と感じてしまう日もある。(林檎ちゃんトータスごめん…)

でも、林檎ちゃんの作品のすごいところは、最新アルバムの中に絶対今の気分の曲があるところだと思うし、どのアルバムを聴き返しても、その頃の記憶がよみがえってくる。

 

だから某関ジャムでの「人生のサントラ」発言は、すんごいナットクしたし、

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林檎ちゃんの音楽はいつもやさしい。

 

 

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そう、殿方はルーティーンしててほしい。

 

……ここまで書いているとまた、しまは殿方ではなくこっち(女の子)側の人間のような気がしてくる。

 

しまも林檎ちゃんのとあるアルバムのオープニング・ナンバーのイントロを聴くと、当時の感覚が鮮明によみがえるらしい。(←ドレスコーズ・マガジン「本と音」参照。)

……やっぱりしまは女の子なのか?

 

 

香りにたとえるなら……。

昔は好きな音楽を「こんなふうになれたらいいな」とか、「林檎ちゃんみたいになりたいな」と思いながら聴いていた。私にとって音楽とは、たぶん「憧れ」だったんだと思う。

今でもなりたい気分に合わせて曲を選んだら、林檎ちゃんがそういう気分にさせてくれる。香水のように、自分の肌にまとうような存在。

 

毛皮のマリーズを聴いたとき人生ではじめて、音楽を聴いて「これは私の曲か?」と思った。

自分と違う性別のしまの歌を、今まで好きになったどんな名曲よりも「わかる……。」と思った。自分の日記を読んでいるような音楽。バンドがドレスコーズに変わっても今でもずっとそうだ。

もちろんこんな素晴らしい音楽は私には作れないし、人としてもしまに憧れてるけど、しまの音楽は体臭(?)みたいに、自分の身体の一部のような存在なのだ。

 

林檎ちゃんの音楽が香水なら、しまの音楽は体臭……。

 

 

作品・ライブごとにメンバーが変わるバンド。

事変の解散後、林檎ちゃんはソロ名義に戻り、

しまは今もバンド名義で活動を続けている。

ソロとバンド、名義のちがいはあるけれど、作品やライブごとに毎回ふさわしいメンバーを集め、バンドを結成するというスタイルは共通しているし、ふたりはいつも楽曲にとって最良のメンバーと音、声を選択するから、その音楽が求めるなら自分がリードボーカルをとらない曲さえもある。

『ジャズ』や「PARTY TOUR」などのメンバーをみてもわかるように、並み外れた才能を持つ彼らに集まるのは一流の演奏家ばかりだ。

林檎ちゃんにとっての斎藤ネコ先生は、しまにとっての長谷川智樹先生のような気がする。

 

固定したメンバーでのバンドが続かなく、解散経験が豊富なふたりは、バンドに向いてないという見方もできるかもしれない。しかし、しまと林檎ちゃんは誰よりも数多くのバンドで作品を遺しているのだから、日本で最もバンド活動に向いているのは、このふたりなのではないだろうか。

 

 

2020年を前に。

ドレスコーズ結成/東京事変解散の閏日からもうすぐ8年。あれから2度目の閏年、2020年をむかえる。

林檎ちゃんには、オリンピック開閉会式の音楽監督という大仕事が待っている。

ぼくらの暮らすこの国で

オリンピックがもうすぐある

と歌うしまは来年、毛皮のマリーズのメジャーデビューから(※ひとりで)10周年をむかえる。

 

しまが  誰とでもやるぼくバンドビッチ  なら、 

林檎ちゃんは、割とデュエットビッ…(以下自粛)。

 

 

志磨遼平と椎名林檎

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よく似たふたりの音楽家の接点が意外と少ないのは、

よく似た道を、よく似た方向にずっと歩き続けているからではないだろうか。

この先、長い音楽家人生の旅路でふたりが出会うことがあるかどうかはわからないが、

素晴らしいふたりの音楽家の作品を聴きながら、彼らと同じ時代を共に生きているということは、私にとって “至上の人生” だと思う。

 

 

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時空を超えて“チルってる”。

 

『ジャズ 』4曲目 “チルってる” の元ネタは、ファイン・ヤング・カニバルズの “JONNY COME HOME” という曲だ。

去年9月の磔磔ライブの前日に収録した京都のラジオでも、しまはこの元ネタ曲を聴かせてくれた。

しまは割と元ネタを公言するタイプで、そのおかげで私は大人になってからも多くの名曲に出会い続けられている。

しかし “チルってる” の元ネタは、めずらしく知っていたのだ。

なぜかというと、トータス松本が2003年に発表したカバー・アルバム『TRAVELLER』に収録されていたからだった。10代の頃このカバーアルバムを聴いて、60年代のR&Bやソウルミュージックに夢中になった。

 

だけど “JONNY COME HOME” のカバーだけはあんまり好きじゃなくて、

いつもこの曲だけとばして聴いていた。

 

  

『TRAVELLER』初回盤についていたトータスのセルフライナー・ノーツにはこう書かれてある。

 

ファイン・ヤング・カニバルズ! たまらない!

彼らの音楽は、ソウル好きのツボをビシビシと突いてくる。

80年代の曲なので、他にくらべてちょっとサウンドが浮いてはいるが(でもこの音!なつかしいでしょう)、どうしてもやりたかった曲。

彼らもエルヴィスの「サスビシャス・マインド」をカバーしているし、名曲を受け継いでいくということは、とても大切なことだ!

 

この曲だけ浮いて聴こえたのは、60年代の曲が多い『TRAVELLER』のなかで、唯一1985年の曲だからだった。

 

でも、去年しまがラジオでかけてくれたときは、(めちゃくちゃカッコいいな……)と思ったのだ。

 

それはたぶん時代が今、そういうムードだからだと思う。

 

そして、平凡さんの影響でもあると思う。

 

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↑ 平凡さん

 

 

平凡さんは、TAKING HEADS 『STOP MAKING SENCE』のデヴィッド・バーンの “meme” を引き継いでいる。

 

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『STOP MAKING SENSE』も、はじめて観たときはそのよさがわからなかったものの、『平凡』が発表された頃に観ると、急にどハマりして何度も再生してしまった。

 

『STOP MAKING SENSE』(84年)と “JONNY COME HOME” (85年)は、どちらも80年代の作品で「熱さ」がなく、“チルってる” 。『ジャズ』とならべて聴いてもまったく違和感がないくらい、今この時代のムードとよく似ていると思う。

 

しかし、トータスのカバーの “JONNY COME HOME” は、チルってない。

 

オリジナルとトータスのカバーとでは、ボーカルの温度差を感じる……。『TRAVELLER』に収録されている他のソウルフルなナンバーやウルフルズの曲よりはまあおとなしめだけど、魂揺さぶる男トータス松本の「熱さ」はどうやってもたぶん冷めない。

 

 “JONNY COME HOME”も、“チルってる” も、どこに行きたいのかなにがしたいのかわからず、その時代をなんとなく“チルってる” 若者のムードがよく映されているが、

 

トータスのカバーだと、

「おい!ジョニー! どこでチルってんねや! も~…… はよ帰ってこいよ~。」

と歌っているように聴こえる。(意訳)

 

 

 

『ジャズ』のしまのボーカルも、アルバム全体を通して熱さがなく、“チルってる”。

人類が滅亡するというのに、特にわめいたりもせず、きゃんきゃんも言わないし、たまにやるお得意の美輪明宏さん系の歌唱も今回はなく平熱だ。曲によっては、亡霊のような声でも歌っている。(亡霊の声聴いたことないけど……)

 

これ、たとえばもし…… “チルってる” を、 THE BAWDIES の ROY が英訳カバーしたとしたら、ファイン・ヤング・カニバルズとトータスぐらいの温度差が生じて、同じ現象がおこるのだろうか……。

いつか、ドレスコーズ with B でROYボーカルでのカバーをみてみたい……。(しまはとなりでチルく踊ってて。)

 

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『TRAVELLER』と『ジャズ』は、さらに共通点があり、両アルバムとも、最後の曲だけ奥野真哉さんがピアノとアレンジで参加されている。

そして、『TRAVELLER』のホーン隊 Black Bottom Brass Band(BBBB)のYASSYさん(Tb)、KOOさん(Tp)、IGGYさん(T.Sax)は、毛皮のマリーズの名盤『ティン・パン・アレイ』(2011年)、そして渋谷公会堂での一夜限りの『ティン・パン・アレイ』完全再現コンサートにも参加されている。

さらにこのふたつのアルバム(トラベラーとティンパン)は、今はなき一口坂スタジオで録音された。

(“JONNY COME HOME” のKOOさん(Tp)の完コピはすごいと思う。ミュート使いとか、間とか、オリジナルをめちゃくちゃ研究されていると思う。)

 

 

 

『ジャズ』は、ジプシー音楽や 2tone SKA 、ニューオリンズ・ジャズ などなど、いくつもの国や地域の歴史ある音楽を継承しているだけでなく、“もろびとほろびて” や “人間とジャズ” のように、最新の音楽の手法を用いて制作された楽曲と混在している。

 

『ジャズ』というアルバムを1枚聴くだけで、いろんな国や時代を旅しているような気分になれる。

“Bon Voyage” という曲があるように、『ジャズ』の裏テーマは「旅」なんじゃないかと思う。

 

1985年の名曲が、2003年の『旅人』(『TRAVELLER』)という名の作品でカバーされ、今年生まれた最新の音楽『ジャズ』の元ネタとなった。80年代を映した名曲が、時代を超えて受け継がれ、その音楽が今、またこの時代を映していることにロマンを感じる。

旅人たちが旅先ですれちがうように、音楽という旅路で、音楽家演奏家たちは共にひとつの作品を遺すためにめぐりあい、そしてまた次の作品へと旅立つのだ。

 

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Bon Voyage のなぞ。

 

『ジャズ 』10曲目の “Bon Voyage” を聴くと、

私はあの夏を思い出す。

 

 

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“Bon Voyage” は、

今年の春に放送された、しまも出演した時代劇ドラマ『やじ×きた元祖・東海道中膝栗毛』の主題歌(やじ×きたVer.)で、やじさんきたさんの旅のために書きおろされた曲だ。

 

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昨年の「12月23日のドレスコーズ」で早くも初披露され、おそらく『ジャズ』のなかでは最初に制作された “Bon Voyage” は、アルバムではブラス編成で演奏されている。

 

『ジャズ』の “Bon Voyage” をはじめて聴いたとき、まるで、Black Bottom Brass Band(以下:BBBB)のパレードみたいだな、と思った。

 

『ジャズ』におさめられているそのパレードのVer.を、私は特に気に入って聴いていたのだが、ある疑問が浮上してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジャズ 』とは、人類最後の音楽。

 

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つまり、『ジャズ 』には、12(曲)の人類最後のシーンがおさめられているのだと思っていた。

 

人類の滅亡や、世界の終わり、または死を連想させる楽曲群のなかで、

“Bon Voyage” だけは明るい曲調で、やじさんきたさんのために書かれた「旅」がテーマの歌詞。

 

『ジャズ』における、この曲の意味とはどういうものなのかがなぞだった。

 

 

 

その謎解きのヒントになったのは、「PARTY TOUR」がはじまる頃におこった、いくつかの出来事だった。

 

 

 

 

そしてそのいくつかの出来事は、あの夏の記憶をよみがえらせた。

 

 

 

 

中高と吹奏楽部だった私は、何度かお葬式でも演奏したことがあった。

 

いつだったかは忘れたけれど、

年の離れたOBの先輩が亡くなられた報せを受け、

先輩のお葬式で “聖者の行進” を演奏した。

 

お葬式で、しかも最後のお別れでみんな泣いている出棺のときに、なんでこんな明るい曲を演奏するのだろうと選曲に疑問を持ちながら、申し訳なさそうに演奏したのをおぼえている。

 

 

 

 

そして、あの夏とは、高校1年の夏休みのことだ。

あの夏、なんと……

泣くコもだまる(←トータス)BBBB のメンバーが、

 

 

 

 

私の高校の音楽室で……

 

 

 

 

我々吹奏楽部員のためだけにライブをして下さったのだ!!!(←自慢)

 

 

 

 

 

どういういきさつだったかというと、

顧問のN川先生が、YASSYさん(Tb)の大阪音楽大学での後輩だったので(BBBBのオリジナルメンバーはじつは全員大阪音大卒)、

 

その夏、コンクールが地区大会ダメ金(←専門用語)で終わって府大会に進めず、ヒマな夏を過ごしていた我々のために、N川先生が YASSY先輩にお願いをして、

 

「こういうカッコいい音楽もあるねんで?」と、

 

サプライズで我々のためだけの、

BBBBスペシャルライブをみせてくれたのだ!!!!

 

 

 

 

 

つまり、私は高1でBBBBの英才教育を受けている。(←自慢)

 

 

 

ライブ後にサックスパートで、

MONKYさん(B.SAX)のレッスンを受けたり、(←自慢)

 

 

当時メンバーだった MITCHさん(Tp)に、

 

私「なに食べたらそんな音出せるんですか?」

と聞いて、

 

 

 

MITCHさんマクドナルド!」

 

と教えていただいたり、(←自慢)

 

 

 

 

 

部活が終わったあとみたいに、

BBBB のメンバーとみんなで音楽室の床にみんなで座りこんで、

BBBB のみなさんがいろんなお話をしてくださるのに、耳を傾けていた。

 

BBBB が何度も訪れているニューオリンズや、

いろんな旅先の路上で演奏されたお話。

いろんな国の文化や音楽、いろんな街での出来事。

 

そして、ニューオリンズのジャズ・フューネラルや、セカンド・ラインというパレードについても、ていねいにおしえてくださった。

 

(でも雑にWikiをリンクする。↓)

ja.wikipedia.org

 

 

ニューオリンズでは、死者の天国への旅立ちをお祝いするために、“聖者の行進” をはじめ、明るい曲をたくさん演奏しながら街をパレードするのだ。

 

 

 

 

それを思い出したきっかけが、ドクター・ジョンの死と、彼のためのセカンド・ラインだった。

 

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あと、ツアー直前に読んだこの素晴らしい記事も、なぞを解くヒントになったと思う。

 

twitter.com

 

 

 

そして、ドクター・ジョンが天国に旅立った日にスタートしたドレスコーズ A.K.A の旅「PARTY TOUR」。

 

このツアーで “Bon Voyage” は、アンコールで演奏された。

 

 

 

 

 

 

 

 

そういうことか……

 

 

 

 

 

 

これらの出来事、そしてあの夏の記憶が、

点と点がつながり、線となった…(←この表現あまり好きくないけど…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぞはすべて解けた。(←金田一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やじ×きたVer.と『ジャズ』の “Bon Voyage” は、

テーマ(=旅)は同じだが、

意味がちがう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジャズ 』における “Bon Voyage” の意味とは

 

 

 

 

 

つまり……

 

 

 

 

 

 

お葬式……

 

 

 

 

 

 

 

人類滅亡後の……

 

 

 

 

 

 

 

世界が終わったあとの…

 

 

 

 

 

 

 

 

死後の旅立ちのための歌なのだ。

 

 

 

 

 

 

そしてまた続く ふたりの日々よ ♪

 

 

 

 

だから、ニューオリンズVer.…

 

 

 

 

つまり…

 

 

 

 

 

 

 

人類滅亡後のセカンド・ライン……

 

 

 

 

 

おそろしい……

 

『ジャズ』とはおそろしいアルバムです……

 

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 なぞが解けたあと『ジャズ』をよく聴いてみると、

 

11曲目の “クレイドル・ソング” では、

「しぬのは こわかったわ」

と歌われ……

 

 

 

 

 

ラス曲、美しすぎるノイズまじりの “人間とジャズ” は、 

霊界からこんにちは……

的な雰囲気がある……

 

 

 

 

 

つまり、『ジャズ』の10曲目 “Bon Voyage” 以降は、

死んだあとの曲なのだ。

 

 

 

 

だから、「PLAY TOUR」では、

本編ラスト “ニューエラ” で、世界が終了し、そのあとのアンコールで “Bon Voyage” が演奏されていたのだ。

(そして、来週11/20に発売される「PARTY TOUR」の映像作品では、アンコールはカットされ、Blu-rayのほうの特典では本編の前後にジュリアン・レヴィ監督による『ジャズ 』のためのショート・ムービー『THE END OF THE WORLD PARTY』のスピンオフが収録されているらしい!すごい!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はー……

 

だからアルバムではわざわざニューオリンズVer.のアレンジに変えていたんですね……

 

ニューオリンズVer.のアレンジである必要があったのですね……

 

 

 

 

 

 

 

 

しまの才能エグい……

 

 

 

 

 

 

 

 

天才か?

 

 

 

 

 

まさか、やじきた主題歌を書きおろすときからすでに、こういう設計図があったのか……

 

いったいどうやったらこんなことを思いつくのか……

 

 

 

 

おそろしい才能……

 

 

 

 

 

「人類最後の音楽」にはここまで描かれていたとは……

 

 

 

 

 

ありがとう、ドクター・ジョン

……それじゃまた   よい旅を!

 

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ドクター・ジョンと若かりし頃のBBBBオリジナル・メンバー。

MITCH さんのInstagramより。

 

 

 

 

 

 

 

  

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そうさ、ぼくはゴースト。

 

 

 

今週は、『Hippies E.P.』をよく聴いた。

 

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http://m/jp/album/hippies-e-p/915669550

 

 

madorigirl.hatenablog.com

 

↑  先週書いた東京国立博物館

 

 

あの日、正門横のロビーで、

集会中のゴーストたちに遭遇した。

 

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ゴースト集会の様子。

 

 

 

ゴーストたち「そうさ、ぼくはゴースト。いてもいなくても同じ。」

 

 

私「私には見えるよ。」

 

 

 

 

 

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ゴーストとドレスコーズ(ビッグトート) 。

(東京で買ったレコードがいっぱい入っているから角ばっている。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴーストたちが座ってらしたのは、

ゴーストという名の椅子。

 

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イタリア製、Kartell のビクトリアゴースト。

 

 

 

 

 

 

 

肘掛付のルイゴーストもあるよ。

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その名の通り、クラシカルな形状なのに空間と同化してインテリアのテイスト、部屋の面積を問わず、合わせやすいから、何度も納品したことがある。

 

とても好きなゴースト。

 

 

 

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(↑ Kartell ホームページより)

 

 

 

ただ、座面の高さが外人サイズなのか、

46㎝ と高いので、日本人の足の長さには合わない。

モデルハウスとか、土足で入る店舗向け。

このときヒールのブーツを履いてて、やっと足がつくぐらいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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この人たちが座ったらちょうどいいのでしょうけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、オリジナル・ドレスコーズが対バンのライブで他のバンドより後にステージに出てきた場合、いつも観客のスケール感が一瞬狂ってしまうぐらい、前3人しままるやまハルヲはおっきかった。

 

 

オリジナル・ドレスコーズのメンバー4人揃って新幹線に乗ったら車内がざわついたことがあるらしい。

 

 

 

4人で歩いてたときにすれ違った外国人に

 

「Oh 〜! ジャパニーズ・ロックバンド!! カッコイイネ!!」

 

て言われて、

 

「あれ、今ぼくらバンドやって言わんかったよな?」

 

とかなったらしい。

 

 

 

 

オリジナル・ドレスコーズ とはそういうバンド。

 

 

 

 

 

 

 

 

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ゴーストという名の椅子、この写真の中の4人にも似合いそう。

 

 

 

そして、いつこの写真を見ても、

スガさまの前髪の造形に見惚れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Gloomy』ちゃんのアナログが届いて、

これでインディー時代のアナログ盤は全て揃った。

 

メジャーから出した作品はどうなるのだろう。

 

はやく『Hippies E.P.』のアナログEP盤がほしい。

 

はやく出してよってずっと思っている。

 

 

 

 

http://m/jp/album/hippies-e-p/915669550

 

 

 

 

 

ドレスコーズと好きな建築。

 

6年前の8月14日に発表された

ドレスコーズ の2nd シングル『トートロジー』。

 

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そして5年前の今日はたしか、日比谷野音

オリジナル・ドレスコーズ 最後のワンマン公演が開催された日だ。

 

開演前に流れていたマイルスも、

あの日演奏された『トートロジー』に収録されている “フォークソングライン(ピーターパンと敗残兵)” も、

風に乗って、自然と同化して、とても気持ちよかったのをおぼえている。

 

 

 

 

 

 

私は『トートロジー』の中ジャケが撮影された建築が、とても好きだ。

 

 

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谷口吉生設計の、東京国立博物館法隆寺宝物館。

 

 

 

 

トートロジー』の中ジャケは、

ここのエントランスホールで撮影された。

 

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ライムストーン貼りの壁に、

写真のなかのしまが手をあてている位置を、

石の柄と目地の位置から特定して、

 

 

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しまと同じ位置に立ち、

壁の同じところに手をあててみたが、

手足の長さと身長に大差があるので、

同じポーズはとれなかった。

 

いちばん好きなバンドが、自分の好きな建築で写真に写ったというブチ上がる案件で、彼らがいた位置に自分が今立っているというのに、私はいたって冷静だった。

それは、この建物だからなのかもしれない。

 

 

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この写真は冬のお昼前に撮ったもので、

中ジャケが撮影されたのはおそらく6月の夜明け直後。

季節と時間が違うから、日の射し方もずいぶん違う。

 

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無音のまま自然と同化しているこの空間で、

ルーバーの影と日の動きだけを眺めながら

永遠に過ごしていたくなる。

 

 

 

 

 

この建物の好きなところは、

建築のノイズ(余計な出っ張り)を徹底的に排除して、

静寂がデザインされているところ。

 

 

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↑ 例えば階段の手摺も、出っ張りをなくすためにわざわざ壁に掘り込まれている。

 

 

展示室の照明器具や、あらゆる設備はすべて黒い天井や壁の中に埋め込まれ、身を潜めている。

 

法隆寺のお宝だけがぼんやり浮かんで見えるだけの静寂の空間で、ただ過ごすのが好きだ。

 

この建物でただ過ごすためだけに、

上野を訪れるといつも立ち寄ってしまう。

 

法隆寺のお宝をちゃんと鑑賞したことなんて一度もない。)

 

 

 

 

 

 

 

 

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ちなみにこの頃のアー写も、

同じトーハクの敷地内にある表慶館という建物の前で、

同じ日の、夜が明ける前に撮影されたのだと思う。

 

 

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↑ ここな。

 

 

 

ジャケットをデザインされた信藤三雄さんは、

なぜオリジナル・ドレスコーズ に乞食の格好をさせて、ここで撮影しようと思ったのだろう。

 

 

去年の2月、

私はここで過ごしてからィヨコハマへ向かい、

KAAT で舞台『三文オペラ』を観た。

 

 

今度は(dresscodes)Beggars Quintet として、

また違うメンバーと音楽乞食を演じるしまを観ながら、

そんなふうに不思議に思った。

 

 

 

 

 

 

music.apple.com

 

https://music.apple.com/jp/album/%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%BC-%E9%80%9A%E5%B8%B8%E7%9B%A4-single/681104736