味園ビルに恋して。

 

 

大阪千日前、裏通りの歓楽街にひときわ魅惑のネオンを放つ巨大な建物。

それは、わたしがかつて恋をした「味園ビル」である。

 

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1950年代にキャバレー、ダンスホール、ホテル、宴会場、スナック街を含む、複合レジャービルとしてオープンした味園ビルは、1980年代のバブル経済期まではミナミを代表する存在だった。

父や叔父の話によると、地下にあったダンスホールに元キャロルのメンバーが出演していたり、当時ゴーゴーが流行っていたので、若者もよく踊りに行っていたらしい。

ここ数年の間に、NHKの『ドキュメント72時間』で「大阪ミナミ・真夜中のアングラ長屋」として放送されたり、戦後ビルマニアたちからも注目を集め、いくつかの写真集や、一般向けの建築本にもよく味園ビルが掲載されている。

 

全盛期は1000人ものホステスが所属していたという地下のマンモスキャバレー・ユニバースが2011年に閉店し、ホール貸しされるようになってからは、EGO-WRAPPIN'の年末恒例ライブや、年始にも毎年おもしろいライブイベントが開催されていて、今わたしにとって味園ビルは、年末年始に毎年顔を出す親戚の家みたいな存在かもしれない。

 

わたしが味園ビルに恋して足繁く通っていたのは10年くらい前、毛皮のマリーズと出会った頃だった。

当時大阪のクラブシーンで活躍していたTRIBECKER(トライベッカー)というバンドが好きで、ほとんどのライブに通っていた。

バリトンサックス、トランペットが入った編成で、ジャズとロックを混ぜ合わせたようなサウンドにのったボーカル・片岡澄人さんの歌声を、ヴィレヴァンで 視聴した瞬間、ひと耳惚れしてしまい、直近の梅田シャングリラではじめて彼らのステージを観るともう、どハマりした。

 

TRIBECKERのライブでステージの最前列にいつもいるおねーさんたちが、(サクラか?)と思うくらいすっごい美人ばっかで、フロアの後ろのほうで踊っているフアンの人たちもみんなおしゃれでかっこよかった。

音楽もライブもビジュアルもお客さんも、TRIBECKERのなにもかもがかっこよかった。

なにこのおしゃれな大人の世界!とあこがれたあの世界観は、高山泰治さんが手がけるジャケットにもよく写しだされていると思う。

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とにかく自分もあのかっこいい人たちのいる空間に溶け込みたくて、がんばっておしゃれしてライブハウスに通って、ステージが終わったあともフロアでメンバーとか、すっごい美人なおねーさんたちとか、おしゃれでかっこいい人たちと仲良くなって話をしたのがたのしかったなあ。

年上のフアンの人たちが「こんないいライブ観たあとに蛍光灯ガンガンの電車乗って帰るのヤじゃない?」とか言ってて、便乗してタクシーでミナミに行って朝までお酒を飲んだのとか(今考えると、気持ちはわかるがめちゃくちゃな理由である)、思い出がたくさんある。みんな元気かな……

わたしにライブハウスの文化や、夜遊びのしかた、あたらしい世界をおしえてくれたのは、TRIBECKERだった。

毛皮のマリーズと出会ったのも、TRIBECKERと何度か対バンしていた、インディー時代のTHE BAWDIES の ROY と話していたときにおしえてもらったことがきっかけだった。

 

そのTRIBECKERがはじめて主催したイベント『LADY LUCK』に、味園ビルに店を構えるBAR「涙のイタリアンツイスト」(以下イタツイ)が、出店していたのだ。(店名はモチロンあのバンドの曲名から。)そのイベントの打ち上げでメンバーから「味園ビル」のおもしろい話をいっぱい聞かされてはやく行ってみたくなった。

 

次にTRIBECKERが出演したのは、アメ村の今はなきPIPE69(パイプロック) という小さなライブハウスで開催された、マネースパイダー主催の『HOUSEROCKIN' 』(通称:ハウロ)という、オールナイトのイベント。

ライブがハネた午前3時、始発までどうしようかと言ってたときに、TRIBECKERのメンバーにイタツイに行ってみたいと言ったら、お店に電話をかけてくれたので、ファン3人でアメ村から味園まで歩いて行くことにした。

 

今みたいにGoogle Maps とかないから、面倒見がいいおにいちゃん(TRIBECKER のメンバー)におしえてもらった道順を思い出しながら、真夜中のミナミをおそるおそる歩いていくと(割と人がいなくて静かだった)、味園ビルが建つ通りについた。

周辺の飲食店はすでに閉店している時間。

暗闇のなか、向かいのラブホよりもひたすらギラギラしたネオンの看板が目立つでっかいビルを目にした瞬間、わたしは恋に落ちた。

 

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ビルの前まで歩いて行くとあらわれる、噴水を中心に描いたスロープが魅力的すぎて、スロープをうまく歩けない(←たぶんライブで遊び疲れたのと歩き疲れたのとお酒のせい)。

 

なんとかスロープを3/4周歩き進んだところで、大理石の壁、エキゾチックなデザインのペンダントライトがある2階の入り口にたどり着いた。

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数段の階段を昇ると、映画のなかに迷い込んでしまったような世界が広がっていた。ここは日本か? なに時代? 夢なのか?と思ったけど、ムリして履いたヒールの靴ずれが痛いから、夢じゃない。

入り口の階段を昇ったところから伸びるなが〜い廊下の両サイドにドアがたくさんあって、いろんな看板がある。そしてそのドアの奥ぜんぶがお店になっているようだ。

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よく見ると廊下はゆる~いスロープになっていて、突き当りを曲がるとまたスロープになっていて、迷子になりそう(嬉)! 

スロープを何周かぐるぐるまわって、何度か通りすぎてやっと「涙のイタリアンツイスト」の看板と、真っ赤な扉をみつけた。

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 ↑ 10年前の味園ビル2階 (2019.02.19 追加)

 

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  ↑ 味園時代の Bar 涙のイタリアンツイスト(2019.02.19 追加)

 

ドキドキしながら真っ赤な扉をあけると、なんと!お店の中も真っ赤だった!

奥に長いお店のカウンターには、すでに3枚のコースターが置かれていて、『LADY LUCK』に来ていたバーテンのジュンくんとシュウくんが待っていてくれた。

無造作ヘアーが流行っていた時分に、ポマードでビシッとキメたジュンくんとシュウくん。ふたりの50's ヴィンテージでアメリカンなお洋服の感じも好きだし、音楽の好みもよく合う。

それ以来ライブのあとや、夜遊びの最終目的地はいつもイタツイで、真夜中から朝まで、お酒を飲みながらジャズやソウルミュージック永ちゃん、ときにはやしきたかじんのレコードを聴きながら過ごした。

音楽の話も恋バナもよくしたし、仕事の話とか悩みも聞いてもらったり。マーヴィン・ゲイの “Stubborn Kind Of Fellow” とトータス松本のカバーとレコードを聴き比べて遊んだりもしたなあ(←トータスすごいな!!!てなった)。

 

朝が来て、赤い扉をあけてゆるいスロープをとぼとぼ降りていくにつれて、明るくなった外の光が見えてくる。

もう夜が終わって、味園ビルを離れないといけない。離れたくない。

外のスロープの中心の噴水から聴こえてくる水音は、いつも切なかった。

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味園ビルには数年通ったけど、TRIBECKERのメンバーの半分が上京してライブがほとんどなくなったこと、イタツイが味園ビルから移転したこと、そしてわたしはもっと夢中になるバンドを見つけて、味園に行く理由はなくなっていった。

 

時代は変わってゆく。

 

今、味園にはもう、知っている人のお店はひとつしかない。

表のスタイリッシュなモノトーンの看板もあの頃はなかった。

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 ↑ 看板がスタイリッシュじゃない10年前の味園ビル(2019.02.19 追加)

毎年のようにお店が入れ替わっているし、20代の若い人を多くみかける。

味園は、若い経営者たちが夢をかなえるための修行の場なのかもしれない。

20代前半で味園にイタツイをオープンしたシュウくんとジュンくん(ふたりはしまと同い年)。自分とあまり歳がかわらないのに若いふたりでお店を経営していて、深夜なのに満席になるぐらい人気のお店になって、もっと広いところに移転していって、いつもすごいなあと思っていた。

こないだ今のイタツイでジュンくんと、「味園は若い人のところやからね。あの頃はみんな若かったね。」なんて話していた。 

 

戦後ビルマニアの間では、そのビルが男性か女性かについて討論することがよくあるんだけど(←キモい)、味園ビルは女性だと思う。

今は多くの若者の、そして50年代から男性たちの、いつの時代も無数の夢をやさしく包み込んできた女性だ。

 

 

味園ビル」を知るきっかけになったイベントのTRIBECKERの対バンが小島麻由美さんだったこと。 

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夜遊びしてた日にたまたまPIPE69に寄ったら、その日もハウロのライブがハネたあとで、壁側に髪と手足のやたら長いお兄さんがしゃがんでいて、その人はあとで知る毛皮のマリーズのしまだったこと。

 

味園ユニバース』という映画は、ドレスコーズのデビューシングル『Trash』が主題歌の映画『苦役列車』と同じ山下敦弘監督の作品だということ。

 

TRIBECKERが対バンしたほとんどのバンドが、毛皮のマリーズとも対バンしていたり、関わりをもつこと。

 

わたしとしま、TRIBECKER、味園ビルにまつわるエトセトラをあげていくとキリがないけど、TRIBECKERに出会わなかったら、わたしは今もしまの音楽に出会えていなかったかもしれない。

 

味園ビルはわたしの、あのあまい季節の象徴のような存在なのだ。

 

あの味園ビルに今週末しまが、ドレスコーズが来る。

 

 

 

こういうの、エモいというのでしょうか。

 

 

 

 

ここまで書いたことはわたしの個人的な想いだけど、前野健太さんとしま、新宿系のおふたりに味園ユニバースなんて、ぜったい似合うと思う。

前野健太×ドレスコーズのツーマンツアーのファイナルに、これ以上ふさわしい場所はない。

 

 

ただひとつだけ、問題がある。それは、ファイナルの日程である。

毎年たのしみにしている年に一度のウルフルズのヤッサ@万博記念公園もみじ川芝生広場とがかぶってしまった……。

 

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つらい……。

 

しかし悩むことなくわたしは今年、万博ではなく、味園に行く。

ウルフルズではなく前野健太×ドレスコーズを選択する。

 

これは、行かないと絶対後悔すると思います。

 

全国のみなさん、来週9月29日(土)味園ユニバースでの、前野健太×ドレスコーズざくろ ~歌をくわえた犬たち〉というツーマンツアーのファイナル公演に必ず行きましょう。

 

そして台風24号は、こっち来んな!!

 

maenokenta.com

 

 

京都磔磔における室内楽のドレスコーズ

2014年4月1日 『京都磔磔における初期のドレスコーズ』以来の、磔磔でのドレスコーズのライブ。

しかし、4年前とはしま以外全くメンバーがちがう

今日は京都在住の音楽家によるバイオリン、チェロ、ギター、ドラムという、はじめて観る編成のドレスコーズだ。

磔磔でバイオリンとチェロを聴くのも、わたしは人生初。

 

対バンは、ギリシャラブとキツネの嫁入り

トップバッターのギリシャラブが終わる頃、ドレスコーズのいつものカメラマン2名が準備を始めたので、2番目の登場と勘づく。

映像カメラマン(日本代表GK川島似)は、『カメラを止めるな!』の「ONE CUT OF THE DEAD」Tシャツを着ている。

 

ギリシャラブのステージ終了後、楽器を片付けたメンバーが客席の袖を退場していくたびにお客さんから拍手が起こる。磔磔の対バンライブってこんな感じだったっけか? 今まで経験したことのない、あたたかいイベント。お客さんがあたたかい。

今までギスギスした緊張感のある対バンのイベントにしか行ったことがないかもしれん。(過去にドレスコーズ主催の対バンイベントは「VS SERIES」と銘打っていたくらいだし。)

 

バイオリンやチェロをかかえたメンバーがステージに移動し、いよいよドレスコーズの出番。

しまは、“贅沢とユーモア” の MV で着ていたシャーツで登場して、「こんばんは、ドレスコーズです。」と一言。

今日のイベントのチラシには「志磨遼平(ドレスコーズ)」と表記されていたが、しまはあくまでドレスコーズ、バンドとして出演しているつもりの印象。こちらもそのつもりで観ている。

 

1曲目 “嵐の季節(はじめに)” のイントロを聴いただけで贅沢な気分になる。

バイオリン、チェロ、エレキギターという斬新な弦楽三重奏の音の重なりが、めちゃくちゃかっこいい!イイ!すごい!もっとほめたいけど言葉が見つからない。)

そして、ギリシャラブ・山岡錬さんが弾く“嵐の季節” のギターソロめちゃめちゃよくないですか? さっきのギリシャラブのステージより、ドレスコーズのギターのほうがイイと思う!!(すみません。)

磔磔はひさしぶりなこととか、磔磔の神様の話とか、フロアのど真ん中にある柱(磔磔は木造2階建の元酒蔵だから真ん中に大黒柱がある)がキライじゃないこととか、今日のこの編成に至った経緯とかを話していたけど、ここのMCではわりと何言っても客席はシーン…… と静まりかえっていて、さっきのあたたかい雰囲気とは打って変わり、ただよう緊張感があった。

 

2曲目 “Lily” のときに、今日はこの編成で聴くワケだから、今日聴くドレスコーズの全曲が、はじめて聴くバージョンだということに気付く(←遅い)。

もちろん今日のセット全曲がよく知っている曲だし、特に好きな曲ばかりだけど、ぜんぶ新曲に聴こえる。

しまは “Lily” を「ひとりになった心境を歌った曲です。」と紹介していたけど、バイオリンとチェロが入ると、ぼっちしまを包み込むようなやさしいメロディーが、もっとやさしく聴こえる。

さっきはシーン……としていた客席が、“Lily” 効果なのか、MCがウケてきた。MCというか、今日は漫談をまじえて曲を進めるスタイルらしい。

ただ、しま声ちっちぇ!! (←4年前とちがうところその2) 

ぼそぼそしゃべるしまの声は、フロアのいちばん後ろで観てると、2階の楽屋? からコトコトきこえる足音のほうがでかくてところどころ聞こえない…… 室内楽だけに、完全に部屋にいる想定のボリュームで漫談をするしま。でも確実に客席から笑いをとっている。気になる。いつか今日の漫談集、カセットテープかなんかで出してください。

 

イガキアキコさんのバイオリンではじまる、バイオリンのための “星の王子さま”。

3拍子の曲が好きだ。いつどこでどんな演奏で聴いてもすばらしいのが名曲だけど、バイオリンのためのこの名曲を、バイオリンの生演奏で聴けることなんて、たぶん数回しかないだろう。

毛皮のマリーズ『ティン・パン・アレイ』リリース時のプロモーションで、しまがFM802に出演していたときに “星の王子さま(バイオリンのための)” をリクエストしたら、この曲は数分で完成したこと、名曲は割と数分でできることが多いということを、ラジオで話してくれたのを思い出した。

 

ここのMCでもまた漫談が聞こえづらい。(2階で何をやっているのだろうか……)

なんか途中、しまが「音楽って、すごいですね。」とか言ってるのは聞こえて耳を疑った。

しまどうした? 気になる。

 

 

今日の “ダンデライオン” は、バイオリンの前奏の前にたっぷり中川さんのチェロが聴けるバージョン。

前奏のときしまの姿が見えなかったのは、しまもおふたりのソロをしゃがんで、じっくり聴き入っていたのだと思う。

バイオリンとチェロのあとに入ってくる錬さんのアコースティックギターがまたイイ……。

西くんとぴょんさまが弾く“ダンデライオン” より好きだ。(すみません。)

わたしのすごく好きなところで、「歌詞をまちがえたよ~♪ フフフ~ン♪」と間違えた申告をメロデイーにのせて歌うしま。今年のPLAY TOUR で “ダンデライオン” の歌詞をまちがえてたらどえらいことになっていたけど、今日のお客さんはあたたかい

 

ほぼYOSHIKIと同じ経歴をもつドラマーの樋口さんがピアノに座り変えて、バラードバージョンの “Trash”。

樋口さんのピアノとしまが吹くハーモニカの前奏に聴き入っていたのに、歌い出してすぐのところでまたしまがまちがえて、「すんません、もっかいやらしてもらっていいスか?」と曲を止める。でも、お客さんはあたたかい。前奏、2回聴けてよかったス。

歌詞を、セリフのようにささやくしま。今日の “Trash” は、この1曲だけ聴いても、オペラを観ているみたいだった。

 

今日のメンバー紹介は、1曲につき、おひとりずつ紹介するこれまた漫談スタイルだった。ステージ終盤、もう一度メンバー紹介をするときにイガキアキコさんを「バイオリン、樋口さん。」と紹介……(樋口さんはYOSHIKIの経歴のドラマーである。)でもやはり、お客さんはあたたかい

 

 

毛皮のマリーズがメジャーデビューしたツアー(『Restoration Tour 2010』おとぎ話、Qomolangma Tomato と対バン)以来、8年ぶりに磔磔で聴く“ビューティフル”。今日最後の曲だ。

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↑ 2010年6月13日『Restoration Tour 2010』@京都磔磔 当日のしま(イノダコーヒ三条本店前)

 

近い将来、毛皮のマリーズが解散して、チョモの山中治雄がしまとドレスコーズを結成して、その2年半後ドレスコーズからしま以外のメンバー全員が脱退して、しまぼっちのドレスコーズになって、そのあとおとぎ話がドレスコーズのメンバーとしてしまと一緒にツアーまわるとか、つまり、8年前のあの日磔磔にいたほとんどのバンドマンとしまはバンドを結成しているという事実も、あのとき磔磔にいた誰ひとり想像できなかっただろうな。

磔磔の神様はわかってたのかな。

 

あの日のわたしが、今日の “ビューティフル” を聴いたら、(しまなにまるくなってんだよ!もっときゃんきゃん言えよ!)って思うかな。

キリスト教徒のような仕草で柱に向かってお祈りをしながら “ビューティフル” を歌う今日のしま。なんか、8年でいろいろありすぎて悟りをひらいているようにも見えたし(スピリチュアル発言連発したせいかもしれんけど)、磔磔の神様がキリスト教なのかどうかは置いといて、10年前の人生複雑骨折してドラマ型統合失調症のしまが(←それは今も治ってないと思うけど)書いたこの曲が、歌い続けられることで楽曲自体も成長し、重みを増しているように今日のわたしは感じている。

昨夜のスタジオではじめて対面したはずの5人の音楽家による短いステージは、わたしがはじめて磔磔でしまを観た日から8年あまりの様々な出来事が帰結して起こった奇跡のようにも思えた。

今日磔磔の小さな室内で、しまの長年の夢だった旅先の音楽家と演奏すること、小編成の室内楽風のアンサンブルで歌うことの2つが同時にかなったこと、そして特別な奇跡を観ることができたのは、音楽を続けてきたしまと、しまを見つけてずっと観てきたわたしたちへの、磔磔の神様からのご褒美だったような気がする。(←しまのスピリチュアルがうつった。)

今日磔磔で経験したことも、8年前の毛皮のマリーズ、4年前の『京都磔磔における初期のドレスコーズ』のように、一生忘れないんだろうな。

 

そして奇跡のステージを終えたしまが、お客さんのあたたかい拍手のなか退場していったあと、「ONE CUT OF THE DEAD」Tシャツを着た川島似のカメラマンが、フロア後方に設置していたカメラを止めた!!!

 

 

ライブのあと秋の京都の夜道を歩いていると、“ビューティフル” の西くんのギターが聴きたくなった。

毎年秋がはじまる頃に、西くんのギターが聴きたくなるのはなぜだろう。

 

(おしまい)

 

 

ツアー全通のススメ。

結論から言います。

 

 

10万円あればドレスコーズ のツアー、全通できます。

※出発地:大阪の場合。

※チケ代、ドリンク代は除く。

※現地での食費移動費おみやげ代ロッカー代なども除く。

※遠征費(宿泊費+旅費)のみ。

出張の場合、会社に請求できるお金と考えたらわかりやすいと思います。

 

今回のドレスコーズのツアー “dresscodes plays the dresscodes” の予算。 

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昨年末、今年の手帳をおろしてはじめて書いたページ。

 

あれは去年のクリスマス・イヴ。

ツアーの開催が発表になり日程を見た瞬間、いける!全通する!ありがとうサンタさん!とすぐさま来年(ていうか今年)のまっさらの手帳に予算案を書きました。先手必勝(使い方合ってますか?)で、ツアーのチケットの先行予約がはじまる前からホテル検索、各社航空会社のサイトをヒマがあれば見て、情報をメモりました。お金の計算は苦手なほうですが、ツアーの予算を考えるのは、めっちゃたのしいです。遠足の前日の比じゃないです。

 

今回のツアーのテーマは「とにかく安く!」ではないです。

もうオトナだし、仕事が忙しい時期だったので、以下のポイントをふまえて予算を組みました。

  • 遠方への移動は、飛行機か新幹線。(バス・鈍行は使わない)
  • LCCを使う場合も広めの席を事前に確保。(フライト中に仕事をするため)
  • ライブ会場に徒歩で行けるホテルに宿泊する。(手ぶらでライブに行けるように)
  • できるだけ大きい机があるビジネスホテルに宿泊する。(ホテルで仕事をするため)

ツアー中、東京も急遽日帰りから泊まりに予定変更したため、最終的には合計114,820円でしたが、変更前の予算は、合計100,440円でした。

全部飛行機と新幹線。調子に乗ってJALクラスJに何回か乗ってこのお値段。クラスJのシートに座って雲の上で飲む、川島良彰氏プロデュースのコーヒーは本当に美味しかったです。JALのCAさんの制服のワンピースがいちばんかわいいと思います。JALが大好きになりました。

今回はまあまあのリッチコースでしたが、例えば新幹線のきっぷを金券ショップで買ったり、高速バスを使えばもっともっと安くおさまると思います。10万あればヨユーです。しかも10万一括で支払うわけじゃないし、ツアーの半年くらい前からコツコツ払っていくワケだから、そんなにキツくありませんでした。

 

 

では、ツアー先で使った経費を財務アプリを見てふりかえってみます。

 

◉初日仙台(5/19-5/20 仙台泊)8,902円

内容:飲み物とか牛タン定食とか喫茶店とかドリンク代とかセブンのコーヒーとか空港までの交通費とかおみやげとか

 

◉2本目札幌(5/26-5/27 札幌泊)14,665円

内容:セブンのコーヒーとパンとか飲み物とか喫茶店とかドリンク代とかジンギスカンとかドトールとか空港までの交通費とかおみやげとか

 

◉3本目福岡(6/2 日帰り)10,343円

内容:豆乳とか空港でスタバとかコワーキングスペースとかラーメンとか喫茶店とか喫茶店とかドリンク代とか空港までの交通費とかおみやげとか空港でラーメンとか

 

◉4本目岡山 (6/3 日帰り)3,940円

内容:喫茶店とかロッカー代とかドリンク代とかラーメンとかおみやげとか新幹線の中でもみじ饅頭とセブンのコーヒーとか

 

◉5本目大阪(6/9 地元)600円

内容:ドリンク代

 

セミファイナル・名古屋(6/9 日帰り)2,743円

内容:飲み物とかロッカー代とかドリンク代とか喫茶店とかおみやげとか現地での交通費とか

 

◉ファイナル・東京(6/16-6/17 東京泊)12,157円

内容:ロッカー代とか喫茶店とか建築の日本展とか喫茶店とかドリンク代とか食費とか喫茶店とか喫茶店とか飲み物とかおみやげとか現地での交通費とか

 

以上。

内容をふりかえってみて、今回はツアー先でレコード屋古本屋に全く近づかなかったことに気がつきました。仕事が忙しかったから仕方なかったけど、ちょっともったいなかった気もします。喫茶店はまあまあ行きました。

 

 

それでは、総合計を上記の経費を含めて計算してみましょう。

 

チケット代は、手数料も含めて7公演分合計で、30,968円です。

 

このツアーで使ったお金、総合計は……

 

 

199,138円!!!

 

まあまあ使いました。

 

でも、これが外タレだったら、

東京ドームでのローリング・ストーンズだと考えたら、

日本武道館ポール・マッカートニーだと考えたら、

7公演も観られませんよね。

まあ、おみやげとか喫茶店とか純喫茶とかコーヒーとか、おさえられた経費はたくさんあると思います。総額のうち約4割がドレスコーズ 以外に使ったお金です。もっと上手にやりくりする方法もあるかもしれません。でもわたしの場合、建築めぐり喫茶店も含めてツアーですから。

話がそれた気がしますが、

 

とにかく。

ドレスコーズの全国ツアー “dresscodes plays the dresscodes”は、20万かけても観に行ってよかった!と思うぐらい価値のある、前代未聞の素晴らしいツアーでした。しまのキャリアでいちばんいいツアーだったと思います。逆に言うと、 このツアー全公演を20万で観ることができたと思うと安い!です。

どんなに素晴らしかったかは、次回から書いていきます。

 

 

なんで、お金の話からはじめたのかは、自分でもよくわかりません。

 

 

 

 

 

はじめに。

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もう10年以上追いかけているバンドマンがいる。

彼のバンドの名は、ドレスコーズ

デビューから、今日でちょうど7年目をむかえた。

 

ドレスコーズ は、彼が2度目のメジャーデビューをはたしたバンドである。

4年前の夏、フロントマン・志磨遼平ひとりを残し、彼以外のメンバーが全員脱退。現在は作品/ライブごとにメンバーが入れかわり、形態を変えるという仕組みをとっている。

 

ここまで書いただけでも、なんかワケありで面倒くさそうな感じの男だけど、まさにその通りで、彼のキャリアについて語りだすと一晩では終わらないので、ここでは割愛する。

 

じゃあ何が書きたくてブログを再開したのかというと、ドレスコーズ が昨年発表した5枚目のアルバム『平凡』以降の活動についてだ。

 

『平凡』のリリースを境に、“何か” が大きく変わってしまった。

 

『平凡』以降のドレスコーズ の活動とは、その “何か” の記録だと思う。

 

『平凡』という作品が生まれる前から現在も、世の中は大きな変革の真っただ中にあり、その記録を志磨はドレスコーズ として、音楽や芸術作品で遺している。

 

 

 『平凡』以降、ドレスコーズ が発表した主な作品、ライブは以下の通り。

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◉ 2017.03.01   5th Album『平凡』

 

◉ 2017.03.17 - 04.09  the dresscodes 2017 “meme” TOUR

 

◉  2017.08.23  『国家』(完全受注生産盤)/『公民』(一般流通盤)

the dresscodes 2017 “meme” TOUR FINAL 新木場STUDIO COAST 収録映像作品(DVD/Blu-ray

 

◉ 2018.01.23 - 02.04 『三文オペラ』KAAT神奈川芸術劇場

◉ 2018.02.10 『三文オペラ』札幌公演(大秋楽)  札幌市教育文化会館 大ホール

音楽監督を志磨遼平、全公演でのライブ演奏をドレスコーズが担当。

 

◉2018.04.01  『1954』

カメラマン・森好弘による初期ドレスコーズ を記録した写真集

 

◉2018.05.09  『ドレスコーズ の≪三文オペラ≫』(CD/LP)

音楽劇『三文オペラ』のドレスコーズバージョンを収録

 

◉2018.05.19 - 06.16  “dresscodes plays the dresscodes”

 全7都市で開催された全国ツアー

natalie.mu

 

 

 

初期メンバーでのドレスコーズ を記録した写真集『1954』は、保存用と観る用の2冊を購入したが、発売日に届いた小包の封をいまだに開けられずにいる。

 

 

本当はもっと時間がたってから書くつもりでいたところを、今日書きはじめた理由はいくつかある。

 

先日終了した全国ツアー “dresscodes plays the dresscodes” の東京・新木場でのツアーファイナルを見届けて、大阪に帰ってきた翌朝に発生した大きな地震

そして、先週末には数十年に一度という記録的な豪雨が西日本を襲った。

 

明日死ぬかもしれない。だから今、この瞬間の記録もすぐに残しておかなければならない。

残念ながら、わたしの場合、そういう立派な使命感からでは、決してない。

 

大きな自然災害の影響を受けた今のこの気分は、7年前の東日本大地震の時とも少しちがう。

これも『平凡』以降に変わってしまった “何か” のひとつだと思う。

 

現在もまだまだ世の中は変革の季節にあり、きっとこれからのほうが加速して変化していくだろうけど、それを止めること、世界を変えることはできない。

ただそれを傍観して記録するだけだ。

 

 

 

西日本も例年よりはやく梅雨が明けた。

長くなりそうな夏の間に書き終えられる気はまったくしないけれど、まずは全公演足を運んだ “dresscodes plays the dresscodes” からふりかえり、『平凡』以降、約2年半のドレスコーズ を言葉で記録していこうと思う。

 

 

 

7回目の夏がはじまった日に。

2018年7月11日   235

 

カンテGでやっぱチャイとケーキ

梅田行きのキップ買って♪

梅田に着いてから歩いて徒歩15分ぐらいのところにあるカンテグランデ中津本店。

 

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日本にチャイを広めたらしい、大阪では有名なお店。(中津本店以外にも数店舗ある。)

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今日は2017年の営業最終日。

誕生日なので、よく一緒にカンテに通う親友がゴータマショコラとアールグレイをごちそうしてくれた。

 

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10年以上カンテに通っているけど、来るたびになんか新しいものがある。

 

 

【今年いきなりできた新しいコーナー・その①】

■カンテ図書館■

 

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名著や、カンテでのアルバイトがきっかけで結成したバンド、ウルフルズが掲載されている音楽誌のバックナンバーなどが置いてある。

 

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96年、ウルフルズブレイク直後の音人。(レア!)

メンバー4人中2人(半分!)の目がちゃんと開いていないという衝撃のカバーから、90年代のブレイク直後のロックバンドと音専誌編集部の多忙さがうかがえる。

f:id:madorigirl:20171231011856j:plain トータス松本執筆の茶新聞。 バイト時代に書いたものと、ウルフルズ結成20周年の年に書いたもの。

 

 

【今年いきなりできた新しいもの・その②】

■カンテオリジナルロゴのトートバック■

 

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10月に見つけ次第即買い。愛用中。

愛用しすぎてて、制作チームの方がわざわざ席まであいさつしにきてくれた……。

 

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■一昨年他界したカンテの看板猫シロのコーナー■

インドのお香が焚かれている。

 

 

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■雑貨コーナー■

インドの街並みっぽい(行ったことないけど)。

 

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■インドっぽい手洗い(知らんけど)■

 

 

庭の階段をのぼって外へ出ると、植木の手入れをしていた店長と「よいお年を。」とあいさつを交わした。

明後日の元旦も、カンテは営業してないけど、となりの富島神社に初詣に来ると思う。

 

来年も、再来年も来ると思う。