『平凡』と婚活。

 

ドレスコーズの『平凡』が発表されて5年が経つ。

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『平凡』というコンセプトアルバムは、長年のフアンたちが一瞬ドン引きするくらいの志磨遼平史上イチの問題作だった。毛皮時代から毎度問題作を作る人にびっくりさせられることには慣れてるはずなのに、この問題作はかなり衝撃的だった。

なんでいきなりジャケットがマネキンになってしまったんかも、はじめて見たときはホントに意味がわからなくて混乱した。

 

『平凡』を聴いたことがない人は、ちょっと何言ってんのかわかんない話をするので、とりあえず聴いてほしい。

 

‎ドレスコーズの「平凡」をApple Musicで

 

『平凡』とは、“meme” をテーマとした、近未来のノーマリスト(均一化された人類・普通の人)たちの世界で悩むミーミスト・平凡さんが主人公の、SF映画かよ!と突っ込んでしまうくらい壮大なコンセプトアルバムなのだ。

 

ほんと聴いたことない人はちょっと何言ってんのかわかんない状態だと思うので、とりあえず聴いてほしい。

 

‎ドレスコーズの「平凡」をApple Musicで

 

要は、みーんなおんなじような人たち(ノーマリスト)の、普通がいちばんいいとされる没個性の世界で、みんなと違うことするマイノリティの人(ミーミスト)は、みんなから白い目で見られたり、罰せられたりするそんな近未来のお話。

没個性の世界だから、個性的であることを推奨するような「世界に一つだけの花」は、禁止ソングなのだ。

『平凡』を聴いたとき、志磨遼平はすっごいこと考えるな…… とか、なんでこんなアルバムが作れるん?とか、音もスゴすぎてただただびっくりしてたけど、さらにおどろいたのは、その後、本当に世の中が『平凡』みたいな世界になってしまったからだ。

 

その序章というような出来事が、『平凡』発表後の「“meme” TOUR」のときにあった。

同世代の女性の知り合いふたりが結婚を決めた。

ふたり(A子さんとB美さんとする)は、それぞれ違うコミュニティでの知り合いで、A子さんとB美さんは知り合いではない。

そして、ドレスコーズも、『平凡』という作品も、ふたりは知らないと思う。

 

A子さんもB美さんも、結婚相談所数社に登録してお金もかけて、本気で婚活をがんばっていた。

膨大なデータから、自分に合いそうなお相手を選んでもらって、毎週毎週知らない人とデートして疲れてノイローゼ気味になってしまって、心配になった時期もあった。

だけど、ふたりともめでたく結婚を決めたのだ!努力して「結婚」という目標を達成したふたりは、本当に凄いと思う。

A子さんとも、B美さんとも結婚のお祝いの食事に同席させてもらって、婚活中のアレコレを聞いたり、お見合い写真も見せてもらった。

違う結婚相談所に登録していて、住んでいる地方も違うはずなのに、A子さんもB美さんもお見合い写真では、同じような服装をしている。そして結婚相談所のアドバイスなのか、全く同じポーズで、全く同じような表情の笑顔。まるでノーマリストみたいじゃないか!

 

どんな服装・ポーズ・表情なのかというと、女子アナ

ノーマリスト=女子アナなのだろうか。

 

実際ふたりに、「なんか、女子アナみたいでかわいいね。」って言ったら、結婚相談所に女子アナみたいな服装や髪型をすすめられたらしい。どんなタイプの男性にも一番ウケがよくて、女子アナを嫌いな男性はいないらしい。今(婚活時)は個性的なファッションはやめてほしいとも言われたそうだ。

A子さんには「23ちゃんは、結婚相談所ぜったい向いてないと思う。」と言われてしまった。

 

そして何十人もの男性とお見合いをしたA子さんとB美さん、それぞれに旦那さんの好きなところは?とか、どうしてその人を選んだのかを聞いてみたら、おどろくことにこれもまた全く同じ答えだった。

 

A子さんとB美さんが、旦那さんを選んだ理由は、

 

 

 

 

 

「断る理由がなかったから。」

 

 

 

 

 

 

 

なんかもっとこう、たのしい恋バナが聞けるとおもっていたのに……。

 

 

 

 

 

これがノーマリストの世界なのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから5年、結婚して遠くに引っ越したのでしばらく会っていなかったB美さんから、今年に入って第一子(女の子)を出産したと連絡があった。

 

あのお見合い写真とは全く違う、女子アナじゃない、どう見てもすごく個性的なファッションで赤ちゃんと写るB美さん。

 

 

 

 

 

そしてその女の子の名前は、

◯◯ちゃん(ふりがな:◯◯◯ちゃん)

 

 

 

名前の由来はあの曲 “世界に一つだけの花” です。(想像してみてください。)

 

 

 

ノーマリストじゃなくて、ノーマリストのふりをした隠れたミーミストやったんか! B美さん。

 

 

 

 

 

 

『平凡』の主人公・平凡さんは、B美さんだった。

 

 

 

 

 

 

 

信じるか信じないかはあなた次第です。

 

 

 

 

 

ドレスコーズの最新作『ドレスコーズの音楽劇《海王星》』が昨日発表されたばかりなのに、5年前の作品『平凡』のお話でした。